Interview with Moodoid about “Cité Champagne” by PUNKADELIX
NeoL / 2018年6月14日 17時0分
クラブシーンでもアンセムとなった“Planet Tokyo”を筆頭に、きらびやかで甘く美しい楽曲を生み出すフランス出身のMoodoid。完成度の高いアートフィルムのようなMVでも注目を集める彼が、待望のアルバム『Cité Champagne』を6月にリリース。サマーソニック2018にも出演が決定している彼にDJのPUNKADELIXがインタビュー。アルバムの背景から視覚表現についてなどを聞いた。
——来日は何回目ですか?
Moodoid「4、5回目です。初回はライヴのために来たのですが、当時は日本に関する知識が全くなかったのでカルチャーショックを受けました。恋に落ちたような感覚になり、それからは年に1回は来るようにしています」
——アルバムには東京をテーマにした楽曲“Planet Tokyo”も収録されていますが、実際に東京にいた時にインスピレーションを得て作られたのですか?
Moodoid「その通りです。山手線で各駅の発車音が違ったりすることに面白さを感じて、例えば自分が新しい駅の発車音を作るとしたらという発想で作りました。この曲には東京独特の騒々しさ、情報にあふれている点など、そういうエネルギーを詰め込みました」
——では特定の場所というよりも、東京という都市全体の印象から作られたのですね。
Moodoid「はい。この曲の中にシンセの音が流れるのですが、それが自分の頭の中に最初に思いついた曲の根源となる要素で、山手線に乗っている時に浮かび上がってきました。曲中は、東京に初めて来たときの自分の気持ちが込められています。歌詞の中に『初めて出会ったように』という箇所もありますが、ある惑星に初めて降り立ったときのような感覚でした」
——今のお話を聞いてからこの曲を聞くとまた違った印象になりますね。さて、Moodoidはソロプロジェクトというかたちですが、ステージに立つときは必ずバンド編成となっています。バンド編成時のメンバーの役割をお訊かせください。
Moodoid「私にとってのロールモデルはデヴィッド・ボウイなのですが、彼のようにその時々でコスチュームやバンド編成を変えるといったスタイルを取っています。今作はフランスのジャズの新世代ミュージシャンを迎えて作っていますが、彼らにツアーも同行してもらいました。彼らとは10年くらいの付き合いなのでもう世界観は出来上がっているのですが、それをそのままツアーに持っていきたいと思ったのです。編成としてはドラム、ベース、ギター、シンセサイザーです」
——作品ごとにメンバーも変わっていくのですか?
Moodoid「私はもともと映画の勉強をしていたので、バンドの捉え方も映画製作のやり方のような感覚なのです。例えば背景や世界観というものを大事にしていて、自分自身は役柄のひとつのように考えるとステージに立ちやすかったりもします」
——確かに、基本のベースはありつつもEPごとにもテーマが違いますね。“Planet Tokyo”はエレクトロニックなサウンドですが、初期はサイケロックの印象が強いですし、ドリーミーなイメージに振った作品もありますしそれぞれに見えてくる景色が違ってきます。
Moodoid「仰る通り、1stアルバムは田舎で作ったもので、火や山、月といった自然と関係のあるものをテーマに制作しました。想像上の国を作るイメージで、子供が考えるような”クリームの山”といった感じですね。今回は都会の中にある要素を一つ一つ取り出していったのですが、そこに生きる人々がいるということを意識しました。ジャズのミュージシャンを招いたのも、生命を吹き込むといった意図です。それもまた僕の想像上の都市で、クラブがあったり車が走っていたりという中で何かが起こっているといったイメージです」
——面白い。ダンスミュージックもお好きかなと思ったのですが、現在のフランスのクラブシーンはどんな感じですか? また、コラボレーションしたいアーティストはいますか?
Moodoid「エレクトロニック・ミュージックは凄く好きで、今回のアルバムにはパラディというバンドのピエールに参加してもらいました。彼との仕事はアルバム全体をリミックスしているような感覚で、本体そのものなのにリミックス盤のような仕上がりになっています。ニューディスコのシーンには特に興味があって、みんなに私の音楽を好きなように動かしてぐしゃぐしゃに作り直してもらっていいよと思っているくらいです(笑)」
——常に美と醜や、繊細さと甘さのギリギリのバランスを攻めている印象があります。その点は以前のバンド形式とは違い、ソロプロジェクトだからこそ出来るところですよね。
Moodoid「ええ、自分の世界観というのは自分の頭の中であり、それをそのまま出せるという意味ではソロの強みだと思います。自分の究極のところを表現するというのが目標で、かつそこでバランスをとるというのは強く意識しています。例えばキッチュであることに対して恐怖は無いし、やりすぎと思われることも構わない。自分がやり切るということにとことんこだわりたいので、そういった意味ではバンドだとそれぞれのやり方や美的感覚を守る必要もあるので、そこを守らないというコンセプトをとる自分としてはソロである意義があると思います」
——音での表現と映像という視覚表現のバランスはどう考えていますか?
Moodoid「実はクリップを自分で作るときもあるんです。“Miss Smith”という曲はミック・ロニーという監督に任せたのですが、他の人の視点が自分の作品に入ることも凄く好きで、自分の世界観を持っている人に任せるというのも魅力的だと思います。映像と音楽というのはとても大切な組み合わせなのですが、今回のアルバムも全部仕上がってから世界観を確認して、そこから映像やジャケットを作り上げていったように、必ず音楽が先行して視覚表現を作り上げるというプロセスを大事にしています」
photography Satomi Yamauchi
interview PUNKADELIX
text&edit Ryoko Kuwahara
Moodoid
『Cité Champagne』
2018.06.27 on sale
※ボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付
(Hostess)
http://hostess.co.jp/releases/2018/06/HSU-10204.html
Moodoid
メロディーズ・エコー・チァンバーのギタリストとしても知られるパブロ・パドヴァーニが率いるフレンチ・ポップ・バンド。テーム・インパラのケヴィン・パーカーがミックスしたデビューEP『Moodoid EP』(2013年)をリリースすると翌2014年にデビュー・アルバム『Le Monde Möö』をリリース。NME誌に「慣習の敵対者」と評される独自の煌びやかなポップ・サウンドでフランスのみならず全世界で注目を集める。2017年末に リリースした『Reptile EP』でも盟友、ケヴィン・パーカーがミックスを担当、ネオンが溢れる日本への憧れを描いたエレクトロ・ハウス・トラック“Planète Tokyo”がヒット。2018年6月23日にアルバム『Cité Champagne』をリリース。サマーソニック2018にも出演決定。
PUNKADELIX (MAYUDEPTH)
国内外に於いて活動しているアートディレクター・デザイナー、近藤麻由によるソロプロジェクト。学生時代より東京そして滞在していたニューヨークでレコードを買い集めるようになりDJとしてのキャリアをスタート。テクノ・ハウスをベースに独自の”DARK&POP”サウンドを展開し、日本各地、海外のクラブからカルチャーシーンまでオファーが絶えず様々な分野において活動している。’12年オフィシャル・ミックスアルバム「ELECTRONIK BEAT PUNK」をリリース。初期衝動をテーマに掲げ、世界各国のアンダーグラウンドミュージックの他自身によるオリジナルトラックを収録。’16年より新たなプロジェクト”MAYUDEPTH”名義での楽曲制作を始動し、DJ SHUFFLEMASTER主宰のレーベル”四季協会”よりリミックス作品を2タイトル、2018年1月にはMAYUDEPTHとして初のEP、”Sneakpeek”をリリース。時代やシーンにとらわれず常にオープンな姿勢でエレクトロニック・ミュージックを探求し続けている。
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