Short Shorts Film Festival 2018 Report
NeoL / 2018年7月31日 12時0分
世界130以上の国と地域から集まった1万本を超える作品の中から優れたショートフィルムを選出する短編映画の祭典、ショートショート フィルムフェスティバルが本年も開催。記念すべき20周年を迎えた今回も、250本あまりの25分以内の映画作品が上映された。
20回目の節目となる年、コンセプトを“Cinema Smart”~想像力で人生を発見する~と掲げ、映画がもたらす想像力による人生の知を探求した。ここではショートショート フィルムフェスティバル2018受賞作品の中から厳選した二作品を紹介。
1.ジョージルーカスアワード受賞作品『カトンプールでの最後の日』
うだるようなシンガポールの熱気のなか、汗の玉を首にびっしり付けた男が急ぐようにプールへ駆け込んでくる。大きく息をしながらプールサイドを見渡す。あの日から変わらないままのカトンプールが少年時代の“ある男”への憧憬の念を引き戻し、スーツのまま水面へ飛び込む。
シンガポールでは1980年代から現在まで政府による同性愛の統制が厳格に行われている。特に男性間の性交渉は犯罪とし、2年以下の禁固に処される。また、違法行為に言及することも避けなければならず、同性愛や安全な性交渉についてのガイドをボランティアが配布するのを、警察がやめさせたという報告もある。当然、映画を含む芸術作品が同性愛を題材として取り扱うことも禁止されている。
シンガポールでは今も統制改正の賛成派と反対派による文化戦争を政府が押さえ込み、出口は見えない状況だ。
本作の終幕曲として使われる『もみの木』は、もともと普遍的な愛を賛美する曲として生まれたが、時の流れとともにクリスマスキャロルとして歌われるようになった。もみの木は、人間の移り気な情感に対して変わらぬ愛の比喩として用いられている。一年を通して冬のないシンガポール、それもプールを舞台としたこの作品で聞こえる『もみの木』は、これまでの単なるクリスマスキャロルとしての存在とは間違いなく一線を画して観客の心に訴えかける。
『カトンプールでの最後の日』(Benjamin’s Last Day At Katong Swimming Coplex)
Yee Wei Chai/15:19/シンガポール/ドラマ/2017 シンガポール国際映画祭2017-オフィシャルセレクション、シンガポールパノラマ部門
STORY
幼少期に通っていたカトン地区のプールが解体されることを聞きつけたベンジャミンは、過去に感じた魔法のような時間を取り戻そうと願いながらプールへ向かう。
2. 和楽器バンド特別製作作品『遠い時間、月の明かり』
音楽と映画の関係性は近年、切っても切れない結びつきを強化している。日本で社会現象にもなった『君の名は。』、またハリウッドでも『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』といったニューエイジ・ミュージカル映画、そして『ベイビードライバー』など数を上げればきりがないほど音楽に密接な名作が生まれ、映画館を賑わせている。この現象で、映画のサウンドトラックの売り上げは急増しており、米ビルボードによると2017年には全体を通し昨年比でその売り上げは3割アップしたという。まさにメディアミックス的相乗効果が表現の可能性を拡げているのだ。
本作『遠い時間、月の明かり』は“和楽器と洋楽器の融合”で音楽性の改革を追求し続ける、和楽器バンドによる楽曲『細雪』をモチーフとした作品である。和楽器バンドによる儚くも彩り鮮やかな音色は、本作の遠く離れた男女の間に数奇な出会いともよべる縁をもうけ、日本特有の“侘び寂び”といった本質的な点に繋がりを持たせるのみでなく、さらに美しい疾走感を躍動的にドライブさせた。
また語り口としてボーカル鈴華ゆう子が参加し、まさに映像・詩・音楽の三位一体としての世界観の広がりを豊かにしている。
メガホンをとった岸本司監督の語る「曲に導かれて物語を作ることは至福の体験だった」との言葉通りの本作は、ショートフィルムというジャンルにおいて音楽と物語の出会いといった新たな可能性を見せてくれる。
タイトル:遠い時間、月の明かり
出演:本仮屋ユイカ、尚玄、嘉人、モコ(アイモコ)
ナレーション:鈴華ゆう子(和楽器バンド)
監督:岸本司
主題歌:和楽器バンド「細雪」
作品時間:12分17秒
ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2018 in 横浜(SSFF & ASIA in YOKOHAMA)(『カトンプールでの最後の日』上映予定)
2018年8月17日(金)~2018年8月19日(日)
横浜美術館 レクチャーホール
6月開催のSSFF & ASIA 2018で上映された作品の中から厳選したショートフィルムを上映。さらに、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA」と連動したスペシャルイベントとして、ダンスをテーマにした作品上映付トークイベントを実施。
鑑賞料金:無料(一部有料イベントあり 1000 円)
チケット予約サイト http://shortshorts2018yokohama0817.peatix.com
主 催:ショートショート実行委員会 / 共催:横浜アーツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://www.shortshorts.org/2018/yokohama/
text by Shiki Sugawara
関連記事のまとめはこちら
http://www.neol.jp/culture/
この記事に関連するニュース
-
クリエイターのためのプラットフォームLIFE LOG BOX 登録作品第2弾 ブリリアショートショートシアター オンライン(BSSTO)で豊島花&長澤樹主演『冬子の夏』(金川慎一郎監督) 配信スタート
PR TIMES / 2024年7月10日 10時45分
-
SSFF & ASIA 2024で最も人気だった作品は!?オーディエンスアワード、Most Viewed Award、ベストアクターアワードを発表 受賞作品は10月に開催の秋の国際短編映画祭で上映予定
PR TIMES / 2024年7月4日 16時40分
-
『SSFF』観客が最も支持した作品を発表 ベストアクター、ジャパンカテゴリーは23歳俳優が受賞
ORICON NEWS / 2024年7月3日 18時36分
-
「SSFF & ASIA 2024」最も観客の支持を得た作品、オーディエンスアワード発表
cinemacafe.net / 2024年7月3日 14時50分
-
短編映画「STRAIGHT PATH」が「BRANDED SHORTS 2024」で最高賞を受賞し、国際的なアワードでFINALISTに入賞!
PR TIMES / 2024年6月29日 21時40分
ランキング
-
1「健診でお馴染み」でも、絶対に"放置NG"の数値 自覚症状がなくても「命に直結する」と心得て
東洋経済オンライン / 2024年7月21日 17時0分
-
2新型コロナワクチンの定期接種、10月から開始…全額自己負担の任意接種費は1万5000円程度
読売新聞 / 2024年7月21日 19時21分
-
3平日は毎日「レッドブル」を飲んでいます。「1日の飲料代」として高すぎますか? また、体への悪影響はないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月20日 3時20分
-
4扇風機の羽根に貼ってあるシール、はがしてはいけないって本当?【家電のプロが解説】
オールアバウト / 2024年7月21日 20時15分
-
5みなとみらいに爆誕「巨大フードコート」のスゴさ 「ワールドポーターズ」で世界の味を楽しめる
東洋経済オンライン / 2024年7月21日 12時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)