Interview with Divina Valeria about “Divine Divas” by DiceK
NeoL / 2018年8月30日 17時0分
60年代、軍事独裁政権下のブラジルで、性的マイノリティとして、女性装をして芸能の才を披露することで自分らしく生きる道を選んだドラァグクイーンたち。当時リオ・デ・ジャネイロのヒバル・シアターで活躍した8人が、デビュー50周年を記念して再結集しライブを敢行する姿を、60年代のシーンを当時の貴重な映像や写真を交えながら振り返るドキュメンタリー『ディヴァイン・ディーバ』。ナイトクラブのオーナーの孫娘であり、ブラジルの人気女優でもある監督のLeandra Lealがリスペクトを持って記録した本作は、SXSW映画祭で観客賞を受賞するなど、国内のみならず世界的に注目を浴びている。その中の一人、Divina Valeriaが公開を記念して来日。「GLAMHATE」デザイナー/メイクアップアーティストであり、ドラァグクイーンであるDiceKが、ドラァグクイーンとして、また”個”としての生き方を問うた。
DiceK「初めに、映画『ディヴァイン・ディーバ』を観て本当に感動したということを伝えたくて。私はお仕事とは関係のない日でも普段からこういった格好をして毎日メイクをしています。だからこそ、この映画を観てそんな自分を誇りに思えたのです」
Valeria「そう言ってくれてありがとう」
DiceK「こちらこそ、本当にありがとうございます。せっかくお会いできたので、色々お聞きしていきたいと思います。自分だからできる質問からしていきたいのですが、私たちのように目立った格好をして街中を歩く時の周りの目についてはどう思われていますか?」
Valeria「もちろん若いころは周りの目によって嫌な思いをしたこともありましたが、私はそんなことを気にしないで自分のままであり続けただけなんです。長い間そんな自分であり続けているので、もう嫌な思いをすることは全くありません。今では人々が私を女性だと認めているので、どこへ行っても注目を浴びることはなくなりました。日本では白人の私は目立ってしまうかもしれませんが、ヨーロッパでは皆が私のことを女性と見ているので『マダム』と声をかけてくれますし、男性が女装をしているとは誰も認識していないんです。いずれにせよ私の潜在意識は周りの目というものに向けられてはいないので、もともと関知しないのですけれどね」
DiceK「日本では女装している人が沢山TVに出ていますが、その人たちはあなたのように強いディーヴァとして人々から尊敬の念をもって見られているのではなく“見世物”としての側面が強いのです。ドラァグクイーンにも気高く居る人もいれば自分を笑いものにする人もいて、色々なタイプがあると思いますが、後者が圧倒的に多いこの国の中で私たちはどのようにあればいいのかと考えることが多くて」
Valeria「私は自分をドラァグクイーンとは思っていません。でもそれ以前にもしかしたらブラジルと日本ではドラァグクイーンの捉え方が違うかもしれませんしね。女性性を誇張して見せることで笑いにもっていくという姿はブラジルにももちろん存在しています。ドラァグクイーンにはそういった役割があることも事実だし、人々からそういう側面を求められていることもあるし、それによって生まれる面白いショーだってあるので悪いことだとは思いません。ただ私自身は過去にも先にもそうはならないし、私が求めるのはグラマラスな女性像なのでその方向に向かっていくだけです。私自身に関して、自分自身であり続けることの勇気やエネルギーが一体どこから来るのかと考えたらそれはわからないけれど、単に自分はこうである、こう生きたいということが明確なので、そんな私を人々はありのままに受け入れるしかないのだと思います。しかしそうやって生きる上で、人々に対して敬意を込めて接することは重要です。常識をわきまえる、上品である、礼儀を尽くす、気遣うということをして初めて人々は私を受け入れるのです。例えば礼儀のない下品な人と言うのはセクシュアリティに関係なく当然嫌われてしまいますからね。ここ数日の間一緒に行動しているスタッフに、私が日本の人々からどう見られているのかを聞いてみたら?(笑)」
スタッフ「もちろん彼女は背も高いし目立ってしまうということはありますけれど、何より存在感がありますから浅草寺に行ったときは『どこかのスターかな?』という風に興味を引いていたように見えました。奇異な目は一切向けられていないようでしたね」
Valeria「素晴らしい!(笑) 20代の頃、女性としてのアイデンティティーを持って生活していた時は、やはり女性ではないと人から認識されて目立ってしまっていました。当時は若くて見た目には今よりも美しかったかもしれませんが、時間が経って自分の仕草やあり方が定着した今のほうが人々は私のことを女性だと見ています」
DiceK「素敵です。勇気や誇りをもらえます」
Valeria「何年か経てばあなたも同じように感じると思います。これには時間が必要ですから」
DiceK「そう願いたいです。この映画のラストでの歌やあなたの他でのパフォーマンスも観ました。そこで感じるディーヴァの美しさや気高さはそういった人となりから来ているのですね。あなたにとってディーヴァとはどんな存在ですか?」
Valeria「歌う歌わないを問わず、存在感やスター性がある人。例えばマリリン・モンローのようなハリウッドの名スターはグラマーであると同時にパーソナリティも素晴らしい。ディーヴァとは、美人かどうかやお金持ちかどうかは関係なく、“私”というものがハッキリして存在感が圧倒的な人のことです」
DiceK「なるほど。私は間もなくドラァグクイーンとして初のショーを行うのですが、あなたがステージに立つうえで心がけていることやアドバイスはありますか?」
Valeria「私はアドバイスというものを人に与えたりしませんし、自分自身も聞きません。ただひとつだけ言えるのは、“あなたがこうなれば良いな”という私の願いだけ。それは、何かをやると決めたからには全身全霊で取り組むということです。そのためには、そのことが自分の深いところで一番愛しているものである必要があります。自分のものにするとは簡単なことではありませんが、常に信じて立ち向かっていくしかない。あなたはすごく若いですよね? まだまだ青いのです(笑)。私はこれまでの道のりの中で、積み重ねてきたものもあれば手放してきたものもあります。あなたにもそういったことがこの先待ち受けていることでしょう。あなたの顔立ちはとても美しいですし、私の目にはドラッグクイーンよりもトランスベスタイトの道に向かうように見えますよ」
DiceK「そんなことを言っていただけて本当に嬉しいです。今日実際にお会いして聞いたあなたの言葉は、私の想像をはるかに超える強さを持っていました。いつか私もそういう強さを持った存在になることができたらと思います」
Valeria「私は長い時間をかけて今の私に至っているわけですけれど、死ぬまで歩みを続けるつもりなので、今この時を最後のキャリアとは考えていません。これまで私が積み重ねてきたものに悔いはありませんし、良い時も悪い時どちらもあったこの道のりにとても満足しています。そして、私や私に限らず8人の歩みが映画として記録として残ることは素晴らしいことです。実際に撮影された240時間分の映像が約2時間の中に収められているので、願わくば続編が出れば良いなと思っています(笑)」
DiceK「そうですね(笑)。私もこの続きが観てみたいです」
photography Makoto Okazaki
text&edit Ryoko Kuwahara
『ディヴァイン・ディーバ』
9月1日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
http://diva-movie.jp/
監督・脚本:レアンドラ・レアル
出演:ブリジッチ・ディ・ブジオ、マルケザ、ジャネ・ディ・カストロ、カミレK、フジカ・ディ・アリディ、ホジェリア、
ディヴィーナ・ヴァレリア、エロイナ・ドス・レオパルド
2016年/ブラジル/ポルトガル語/110分/カラー/ビスタ/原題:DIVINE DIVAS
提供:青幻舎/ミモザフィルムズ 配給:ミモザフィルムズ © UPSIDE DISTRIBUTION, IMP. BLUEMIND,2017
Divina Valeria
歌手として国際的に活躍したキャリアを持つ。1966年にアルバム『 "Valéria -O travesti"』をリリース。70年代は俳優として3本の映画に出演。最初にブラジルからヨーロッパへ渡ったグループの一人で、本国の独裁政権下で投獄されたと噂されている。旅をしながら暮らし、家を持たず、家族との繋がりも持たない。1972年に3ヶ月間、カルーセル・ド・パリのツアーで日本に対座した経験をもつ。東京では赤坂の有名なナイトクラブ「ニューラテンクオーター」やデヴィ夫人が勤務していたことでも知られる「コパカバーナ」で公演。京都、大阪、広島、岡山にも巡業。現在も歌手として活躍中。
http://divinavaleriabrasil.blogspot.com/2018/07/divina-valeria.html?m=1
DiceK
1995年7月生まれ23歳。青山学院大学卒。GLAMHATEデザイナー、メイクアップアーティスト。glamhate.xyz
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