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14 Issue : 平山 潤 (NEUT 編集長)/Jun Hirayama (NEUT Editor in Chief)

NeoL / 2018年12月14日 12時0分

14 Issue : 平山 潤 (NEUT 編集長)/Jun Hirayama (NEUT Editor in Chief)



オトナになるという境界線は、公的には”20歳(もうすぐ18歳に引き下げ)“となっているけれど、もちろんその年齢になったからといって突然に精神が成熟するというわけではない。なんなら、20歳を超えてもまだオトナになりきれていな人はたくさんいるようだ。じゃあ一体”オトナ”ってなんなのか。確固とした定義は難しいけれど、自分だけの換えのきかない毎日をしっかりと歩むことの延長線上に、自分なりの答えが見つかるかもしれない。
進路が少しずつ重きを増してきて、身体も気持ちも毎日少しずつ変化する14歳の頃、いま楽しく仕事したり生活している先輩たちはどんなことを考えて、どんなことをしていたんだろう。そんなファイルを作りたいと始まった「14歳」特集に、NEUT Magazine(ニュートマガジン)編集長の平山潤が登場。ニュートラルな目線を持って社会を見ようと立ち上げたウェブマガジンはユースをメインに多くの読者を持つ。寄り添うようなメディア作りをしている彼の仕事への向き合い方と、“あの頃”の話。



――リニューアルおめでとうございます。『Be inspired!』から『NEUT』へのリニューアルはいつ頃から考えていたのですか?


Jun「ちょうど1年くらい前です。『Be inspired!』を立ち上げて半年くらいでリニューアルの案は出ていたのですが、タイミングが作れずに気づいたら3年8カ月経っていて(笑)。せっかくちゃんと写真を撮っているのに見づらかったりするのがストレスになって、本腰を入れ出したのが1年半前です。もともと『Be inspired!』というのも『HEAPS Magazine』のサブタイトルだったので、じゃあ一緒に媒体名もリニューアルしてしまおう、と。ブランドが変わるというのはかなり大きなリスクだし、改めて名前を決めるのはすごく難しかったです。ロゴも同じくらい悩みました。変えようと決めたときから編集部でずっと案を出し合っていたのですが、『NEUT』という案は本当に最後の最後に出てきました」


――他にどんな案が出ていたんですか?


Jun「『Be inspired!』のイメージを色々な人に聞いて回ったら、“新しいイメージ”や“新しい価値観””新しい領域に踏み込んでいく姿勢”といった声が多かったんです。“new”のイメージですよね。そこで調べていったら、“newbie”は新参者という意味があるということで気に入ったのですが、どうやらネットゲームの世界では新人が入ってくると“アイツはnewbieだ”とかいう使われ方をしているらしく、disっぽいイメージなのかな?と。それで、そういえば” neutral ”という言葉も好きだったけれどよく聞く単語だから意味が直接的に伝わりすぎてしまう、じゃあそれを少し変えようという発想になりました。『Be inspired!』の時はその言葉の意味や、自分がインスピレーションを受けるという受動態の形であることをちゃんとわかっている人があまりいなかったと思うんですよ。でも、inspirationという言葉で政治的なことを言ったらフラットに届くというか。もしこれが“loud”という強い意味の名前だったとしたらもっとバイアスがかかって見ない人も多かっただろうなと。だから、媒体名にあまり意味を持たせないほうがいいのかもと思ってNEUTという造語にしました。NEUTと一文字違いの“newt”は英語でイモリという意味なのでイメージキャラクターをイモリにしたのですが、オレンジのイモリはアカハライモリといって日本固有の種なので日本の媒体ということを主張できるし、イモリは身体が破損しても復活するタフさがあるのでそのメンタリティでいきたいという想いも込めて」





――ニュートラルの意味を持つ“NEUT”の決め手となったのは?


Jun「自分たちがやりたいことと向き合ったときに、ダイバーシティや平等や平和という大きな目標を決めて語っていたとしてもプロセスが欠落してしまいがちだと思うんです。ダイバーシティについて多く語られるようになったいま、日本に欠落しているところはダイバーシティを享受できるようなニュートラルな視点やバイアスのない視点です。そこをまず育てるというプロセスがないといけないと思ったので“ニュートラル”を掲げたんですね。媒体に登場する人たちも、他者に思想を押し付けるわけではなく、個人として何かをやっている人たち。でもその人たちとどこか通ずるところを見ている人たちに見つけてほしいんです。誰にでもマイノリティな要素はあると思うので、そこを上からエンパワーするのでなく“こういう人がいる”と存在を知らせることで自分のことを肯定できたらいいなと思いました」


――リニューアルするときのBe inspired!最後の記事で、“相手を否定せず、自分を肯定する”という言葉があって、とても素晴らしいと思いました。


Jun「それはかもめブックスの柳下恭平さんが言ってくれた言葉です。実際、シンプルなことですよね」


――自分をマイノリティだと感じた経験があれば、違う視点の人でも一概に否定せず受け入れることができる土台になると思います。


Jun「ある時政治活動をしている知人に反原発デモにスーパー右翼とスーパー左翼がいると聞いたのですが、問題は原発にあるわけで、じゃあ結局その問題を解決したいということでは右も左も無く合致しているんだから二分化することはないのではないかと感じたんですよね。また、多様性を謳っている人たちが多様性を認めない人を排除しようとするのを見て、それも超矛盾しているなと。グレーなものなんていっぱいあるし、100%クリーンなものはないし、そこを認めたうえで自分はどこを支持して何を選ぶかということをしていきたい。特に日本人は意見を一つ否定されたら全否定されたと受け取ってしまって議論ができない。そうではなくて、ここが『同意できる』『同意できない』という話をしていかないと。伝統を断つのではなくて革新していくやり方。その白黒じゃないやり方はいろんなところでも実践できるし、そこと向き合ってやっていくニュートラルな視点が必要。今の時代はイデオロギーというものに縛られずにいられると思うんです」




――ニュートラルな視点を持つには、自分の考えを持つということが大前提となってきますね。


Jun「そう。自分の意見を持つ。相手が違う意見でも皆違う人間なんだから当然ですよね。むしろ、同じ部分が一部あるだけでいいじゃんと思うんです。フェミニズムも、男女平等にしていこうという動きがあるのも、やはり男性の方が権力を持っているというのが現状だと思うから、特に男性が変わらないといけない。男性が変わらないと男女平等にならないですし、“フェミニズム”という言葉自体がいらなくなった世界こそが実現してほしい世界です。“そんな時代もあったね”と言える日が早く来てほしいけれど、まだ来ないだろうな。そして僕たちメディアが時代の雰囲気を掴んで、そういうちょっと先の話をすることで世界を見せるものだと思うんですよね」












――媒体に登場する人たちはどうやって見つけているんですか?


Jun「僕はほぼ他のメディアを見ないんです。だから実際に話して面白いなと感じた人や友達やスタッフ、知人から聞いた話がきっかけとなっています。基本的には編集部みんなのコミュニティから引っ張ってくるというスタイルです。それをやらない限りメディアはどこか他のところで取り上げられたものから持ってこないといけなくなり、情報源が狭まっていく。ただ、単純に友達だからというだけではなく、ちゃんと何かをやっているということは前提です。“自分を取り上げてほしい”と声がかかってきたりしますが、基本的には会ってみて面白くない限り取り上げないです。費用対効果は悪いですけれど、それをやらないといい記事は書けないし、それくらい責任を持ってやらないと。会ってみて話してみて納得いってから取り上げるというのが、メディアとしての責任だと思います」


――正しい形だと思うし、そうあるべきだと思います。先日公開されたマイケル·ムーアの『華氏119』の中に銃規制に反対する高校生たちのコミュニティが登場するのですが、諦めた世代の次に新たな世代が声を上げていて。そうやって、日本にも諦めずに声を上げている人たちがいると思うんです。『NEUT』にはJunさんや編集部の方々の世代の皆さんが登場しますよね。 “諦めていない世代”楽しみながら声を上げている世代”のように感じます。


Jun「出てくれる人たちは多くの場合マイノリティとしての原体験があって、それをポジティヴに伝えていこうとしている。今まではどうしても、社会問題に取り組んでいる人たちが楽しんでいてポジティヴに伝えるということが少なかったんじゃないかな。ネガティヴになっていくと、クリエイティヴやお金というポジティヴなものも入ってこなくなる。固定観念として社会問題を考える人は真面目じゃないといけないという風潮があったけど、今の若い人たちの“自分が楽しいからやる”というあり方が興味のない人たちを一番巻き込んでいて、それはすごく大事だなと思います」


――楽しめるようになったのはなぜなんでしょうね。


Jun「情報化の流れで海外に目が行くようになったのが一因としてあると思います。自分がアメリカに1年いたときに感じたのは、若い世代の社会問題への関心の高さや、それを考えること自体がクールだと思われているということでした。そういうのを見ていて、この流れは日本にも持ってきたいと思いながら『Be inspired!』を運営してきたんですよね。社会問題を考えるということがクールという段階から、また次に進めばそれが日常になっていく。海外のそういったムーヴメントは日本の意識の底上げになったのではないかと思います。今は特にアメリカのセレブリティがSNSなどで投票しようと声を上げていますよね。ここまでいくと本当にメインストリームだなって、泣けるほど感動しました。現地ではもう、今やオープンに話していくことをやらないとダサいくらいになっているから」





――リニューアルでのイベントの開催などもそうした場づくりになっていました。


Jun「そうですね、今回は映像も作りました。まずイベント自体はローンチという節目でいろんな人が集まれば良いなと思ったのもあり、実際に総勢500人くらい来てくれましたね。参加型イベントが良いなと考えて、子供から大人までできるボーリングをやろうと笹塚ボウルを借りて。笹塚ボウルの方々もカルチャー好きの皆さんで“若い人の文化を支援したい、ぜひやってほしい”と言ってくれて。色々な人が集まる“ボウル”になっていきたいというコンセプトにもガッチリ合いました。そして、やるんだったら無料が良いなと考えていたので初めてクラウドファンディングで資金を集めました。クラウドファンディングやるという自体がイベントをやるということやリニューアルするということを知ってもらえる機会にもなるし、変わるよという姿勢も見せられるし、今まで読んでくれていた読者によって支えられているという意識が強くあったので彼らが集まれる機会にもなるし、やってみようと」


――実際に読者と会われていかがでした?


Jun「本当にやって良かったなと思いました。毎日読んでいる人だけが読者ではないということが分かりました。読んでいなくてもコミュニティの一部だ、仲間だと感じました」


――これからの『NEUT』についてどう考えていますか。


Jun「今の時代、ポップスターという存在はファンが分散化されてしまうけれど、テイラー·スウィフトだったりレディ·ガガは絶大な影響力がある。『NEUT』もポップスターではないけれどそうしてマス向けにやっていかないといけないし、そうしないと何も変わらないと考えています。そのためにも誰でも読めるものを作っているんですね。ファッションは興味があるけれど社会や政治についてはわからないという人にも興味を持ってもらえるように作っていて、大きな企業も一緒にやってくれるならやりたいし、その方がインパクトが大きいのであればやったほうがいいんです。マスとニッチの境目を作らずにうまく多くの人にニュートラルな視点を持ってほしいですから。NPOやNGOといった団体はクリエイティヴが全く入っていなかったりするから、そこを繋げる仲介的な役割にもなりたいなと思います。社会問題とクリエイティヴの間にも分断がまだありますしね。それにまだこういう、本質だけ突き詰めていっているweb媒体の生存方法がないなと思っているので『NEUT』としての生き残り方法は常に考えています。内容としてはどんどん下の世代をフックアップしたい。年上になればなるほどすでにメディアに出ている人たちは多いわけですから、若い人たちで本質を突き詰めていっている人を出すということが必要だと思います。NEUTが登竜門的な存在になれればいいですね」

















――最後に、自分の14歳の頃を振り返ってみて、どんなことを考えてどんな生活をしていたか教えてください。


Jun「中学2年生くらいですよね……まず親父の話からさせてください。祖父が立ち上げた基板を作る工場を親父は継げと言われていたらしいのですが、彼はそこを継ぐまでは好きなことを仕事にしていて、フレンチのシェフをしていたんです。そこから工場を継ぐことになったのですが、家では料理をしたいと言っていて。だから、実家のキッチンは厨房かというほどしっかりしていたんです。ホシザキの業務用冷蔵庫に、製氷機、ガスコンロは7口(笑)。それで僕も料理を好きになって手伝いをしていました。17歳まではパティシエになりたくて、中高一貫校だったから受験もないし、部活から帰って家でお菓子を作ったりしていました。ウチではキッチンには男がいるということが普通だったんです。小学校は私立の学校に通っていたのですが、そこは女子校の付属だったので男子がクラスの2割しかしなくて、女性がマジョリティな環境で過ごしました。女性の中にいかに適合するか、その中でどう楽しむかということを考えて過ごしていたので、その辺りの経験は今の媒体にも繋がっています。小学生のころは何も考えずお菓子作りをしていたりしたけれど、中学生になって皆の中にある程度の社会的に構築された“男性像”ができあがってくる中で、お菓子作りは世間的には女の子っぽいことなんだと知りました。でも自分は好きだからやっているし、親父もやっていることなんだから別にいいやと。部活はバスケをやっていたのですが、スポーツもお菓子もどっちかだけじゃなくて、どっちもやっていいじゃんというのは当時からなんとなく感じていたことです。男性性、女性性というのもそうだけれど、体育会系と文化系どっちも属していて。そっちのほうが色々な人と仲良くなれてコミュニティも拡がるんですよね。そういう環境にいたからこそ自分は自分だからと考えるような原体験をはやく得ることができたんだと思います。もちろん、当時は悩みもあったと思います。性別が違うからこそ言いにくいことがあったりしたり。でも、そういう恵まれた環境だったから男女の間を取り持ったりする経験も多かったし、運動もできたほうで生徒会にも入っていたので学校のヒエラルキー的にも恵まれていたのもあって先生と生徒の間に立つことも多かった。なので、間に立つニュートラルな立場というのは、まさに自分を体現しているのかも」











平山 潤 / Jun Hirayama
NEUT Magazine創刊編集長

1992年神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学経済学部在学中、米カリフォルニア州で一年間を過ごし日米の若者の「社会への関心の差」に気づかされる。大学卒業後、新卒でHEAPS.株式会社に入社、同社が運営する社会派ウェブマガジン『Be inspired!』の編集部員となる。2015年4月に副編集長、翌年8月には同誌編集長に就任。現在は2018年10月に『Be inspired!』からリニューアル創刊した『NEUT Magazine(ニュートマガジン)』で創刊編集長を務める。「既存の価値観に縛られずに生きるための選択肢」をコンセプトとする同誌で、消費の仕方や働き方、ジェンダー・セクシュアリティ・人種などのアイデンティティのあり方、環境問題などについて発信している。世の中の「当たり前」や「偏見」に挑戦する人々から日々刺激をもらい、少しでも多くの人に“ニュートラルな視点”を届けられるよう活動中。

http://neutmagazine.com



photography Shintaro Nakamura / Tatsumi Okaguchi / Sayuri Murooka
text Ryoko Kuwahara

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http://www.neol.jp/culture/

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