意識と無意識の境界線のはざまで Julia Shortreed EXHIBITION “Unconscious”
NeoL / 2018年12月18日 20時56分
QUIET NOISEでは年内最後の展示として12月19日(水)よりJulia Shortreed EXHIBITION “Unconscious”を開催。以下、本展キューレーターよりコメント。
個展「Unconscious」におけるJulia Shortreedの作品は、描くという行為と同時に、〝意識〟と〝無意識〟という自分の中の二つの存在とコミュニケーションを取るような繊細な作業によって生まれたものではないかと思います。
というのも、今回の作品は、絵の裏面こそ表。意識的に描いている表面は、最終的には裏となり、人の目に触れることはありません。
あくまで表面を仕上げていく中で意図せず生まれたものでなくてはならないので、裏面を少しでも意識すると、この作品の純粋さは、いとも簡単に失われてしまいます。
意識と無意識の境界線は、紙一重です。
彼女は、その狭間で、時に揺れたり、委ねたり、泳いだりしながら、作品をつくり上げたのではないかと想像するのです。
並べられた作品を見ていると、絵画を見ているというより、博物館で目にする標本を見ているような、掘り起こした物質の欠片を目撃しているような感覚をおぼえます。
そして、そこに鉱物の美しさを目の当たりにしたときに似た「敵わないなぁ」という気持ちが湧き上がります。
フレームの中に、一見大人しく収められた色彩や形状や重なりは、彼女の中に少し前まで存在していた〝無意識〟という生き物です。
絵の具を媒介にして初めて空気に触れた、その愛らしい存在に会いにきていただけたら嬉しいです。
キュレーター 内海織加
”ヨーロッパへ旅をした時、経年で色が剥がれた壁が好きで、見つけては写真を撮っていました。
時間の経過で生まれた意図していない傷や剥がれた後の歪な線に美しさを感じ、こんな絵を描けたらと思っていました。
ある日、作品を描く道具として使っていた板に絵の具が何層にもなっていることに気づきました。
そして、その絵の具の塊を剥がしてみると、そこに出現したのは、まったく意図していない魅力的な存在。
剥がしてみて初めて目にする色彩や形状や描かれた曲線は、まるで私の好きな鉱物のようで、思わずハッとさせられました。
人の意識や意図が及ばない、無意識が導いてくれた美しさに、すっかり魅せられてしまったのです。
今回の作品は、意識的に描いたものの裏側に存在していた、無意識の造形。
私自身も、描き終えてようやく作品と対面することができるので、意図せず描いていた絵とも、私の中に存在する無意識という名の〝彼らとも〟、「やっと会えた」という感覚なのです。
無意識の中で生まれた作品とあらためて向き合い、私の中に存在する〝彼ら〟の歪さや不思議さと対峙しながら、背景の色をセレクトして意識的に額の中に存在させること。それは、私にとって、偶然性を必然性に変える大切な時間でした。
無意識には、たくさんの情報が蓄積されていると言われています。
残したかったけど忘れてしまった瞬間や、抑圧されて表に出てこれない想い、世代を越えて受け継いできたもの、祖先の経験や動物的な過去の痕跡があるとも言われています。
私の作品にも、そんな記憶にも残っていない情報が紐づいているのかもしれない。
そう思うと、ひとつ一つの作品がとても愛おしく感じられます。
今回の作品たちは、〝彼ら〟の居場所が私の中にあり、〝彼ら〟がいることによって、私は存在しているということ、そして、すべてのものは、ただ〝そう〟在るだけで美しいということを、静かに語りかけてくれます。
わたしの中にも、そしてきっと、作品と出会ってくださるみなさんにもー。”
――Juria Shortreed
Julia Shortreed EXHIBITION “Unconscious”
アーティスト :Julia Shortreed
展覧会会期 : 2018.12.19(wed) – 2018.12.26(wed) ※期間中無休 11:00-20:00
レセプション:2018.12.19(wed) 18:00-20:00
会場 : QUIET NOISE arts and break 東京都世田谷区代沢2-45-2 1F
関連記事のまとめはこちら
http://www.neol.jp/art-2/
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