『永遠に僕のもの』 ロレンソ・フェロ来日インタビュー/Interview with Lorenzo Ferro about “El Angel”
NeoL / 2019年8月14日 21時0分
2018年にアルゼンチンで大ヒットを記録した映画『永遠に僕のもの』が8月16日に全国公開される。1971年〜72年に強盗と殺人を繰り返した実在のシリアルキラー、カルロス・ロブレド・プッチの半生にインスパイアされた作品だ。今回取材をするにあたって、「黒い天使」や「童顔のモンスター」と呼ばれたプッチの画像を検索して驚いた。そこに表示されたのは、映画のポスターに映る主人公カルリートスによく似た、ブロンドのカーリーヘアに天使のような顔立ちをした美少年だったから。プッチをモデルに新たに生み出されたカルリートスを演じたのは、本作で俳優デビューを飾ったロレンソ・フェロ。演技初挑戦にして、何とも言えない危うい雰囲気と鋭い視線で観客を魅了する。ここでは作品を引っさげて初来日を果たしたフェロに話を聞いた。
――本作に出演するまで演技経験がなかったと聞いて、大変驚きました。なぜこの作品に出演したいと思ったのですか?
ロレンソ・フェロ「僕が選んだわけではなくて、映画に選ばれたのだと思う。最初は父からメールが来て、『こういうオーディションがあるから受けてみないか? お前に興味があると言っているぞ』と言われたんだ。それでただオーディションに行ってみたら、決まったという感じだった」
――抜擢されたときはどう思いましたか?
ロレンソ・フェロ「まったくのサプライズだったよ。風に乗っていたら、その島にたどり着いたという気分だ」
――お父さんも俳優だそうですが、あなたは音楽活動をされていたそうですね。以前から演技に興味はあったのですか?
ロレンソ・フェロ「全然なかったんだ。俳優による良い演技を目にすると、すごくリスペクトしていたけれど、まさか自分が演じることになるとは考えもしなかった」
――あなたが演じたカルリートスのモデルとなったカルロス・ロブレト・プッチは、アルゼンチンではとても有名な実在の犯罪者だそうですね。演技初挑戦にしてこの役を演じる上で、どのような準備をしましたか?
ロレンソ・フェロ「監督と演技コーチと一緒に、6ヶ月の準備期間を過ごしたんだ。試行錯誤を繰り返しながらリハーサルを何度も行なって、何とかみんなが納得のいく方向性を見出すことができた」
――本物のカルロス・ロブレト・プッチの写真を見たら、ゾッとするくらいスクリーンの中のあなたと似ていました。
ロレンソ・フェロ「髪型やファッションを似せている部分はあるんだ。顔自体が似ているかはわからないけど、もしかすると似ているのかもしれないね」
――カルリートスは欲しいから何かを盗むわけでもなく、人を殺すことに罪悪感もない、とても難解な人物ですね。
ロレンソ・フェロ「カルリートスが盗むのは自分が楽しむためであって、その瞬間を生きていると感じるためなんだ。まるでスポーツを愛するように盗みを愛しているのだと思う」
――カルリートスを演じてみて、彼に共感できる部分はありましたか?
ロレンソ・フェロ「実はカルリートスを演じる上で、人々に共感を抱いてもらえる人物にすることを目標にしていたんだ。すごくクレイジーな、自分たちとは遠いよそ者というのではなく、ちょっと同情したくなる部分や、彼のロマンスに焦点を置きたかった。だからダークな部分はあえて少し抑えてある。でもそれは映画の登場人物としての描き方であって、僕自身が個人的にカルリートスに共感したかというと、それはまた別の話だよね。カルリートスの心理には理解できない部分が多いけど、いたずらっ子という意味では自分も同じだよ。彼はちょっと行き過ぎたところがあるけどね」
――「僕は生まれもっての泥棒だ」とか「僕は神のスパイなんだ」と話すカルリートスは、運命を信じているように見えました。ロレンソさんは人生において、事前に運命で決められている部分は大きいと思いますか?
ロレンソ・フェロ「うん。僕は運命を信じているんだ。これまでの人生で起きたいろんな出来事を通して、僕は運命を信じるようになった。もしそういう経験がなかったら、運命を信じるのは難しいと思う」
――俳優デビュー作となった本作やこの役から得た最大のものは何ですか?
ロレンソ・フェロ「この映画での経験から得られた最大のものは、自分はこの仕事が好きなのだと気づいたこと。あとは、本当に素晴らしい友人やプロフェッショナルたちに出会えたことも、僕にとってはとても大きなプレゼントだった」
――今後の目標は? 演じて見たい役はありますか?
ロレンソ・フェロ「特にこういう役というのはないんだ。このまま演じ続けること、音楽活動を続けること、そして、この人生というものを楽しみ続けることが僕の目標なんだ」
photography Shuya Nakano
text Nao Machida
edit Ryoko Kuwahara
『永遠に僕のもの』
公式サイト:https://gaga.ne.jp/eiennibokunomono
8月16日(金)渋谷シネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー
監督:ルイス・オルデガ
プロデュース:ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル、ハビエル・ブリア『人生スイッチ』
出演:ロレンソ・フェロ、チノダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス『オール・アバウト・マイ・マザー』
配給:ギャガ
©2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A / UNDERGROUND PRODUCCIONES / EL DESEO
原題:EL ANGEL/ 2018年/アルゼンチン、スペイン/カラー/ビスタ/5.1ch/115分/字幕翻訳:原田りえ/映倫:R15
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