遠くの悲劇から自己のアイデンティティを問う、西加奈子の長編小説
NeoL / 2019年11月27日 11時58分
イラン生まれの主人公・歩とその家族の半生を通して、他者との絆や自分を信じることの意味を描いた長編小説「サラバ!」で第152回直木賞を受賞した西加奈子。その2年後に発表された「i(アイ)」も世界中で起こる問題や悲劇と個人がどう向き合っていくか、そして、その中で自分のアイデンティティとは何か、というテーマに切り込んだ物語となっている。
アメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてやってきたアイ。シリア生まれの彼女は、日本で恵まれた生活を送っている。しかし一方で、自身の故郷や世界中で起こる悲劇に触れるたびに、自分とは違う「選ばれなかった誰か」に思いをはせ、常に罪悪感にとらわれていた。やがて、彼女は海外で悲劇的なニュースが起きるとその死者の数をノートに書き留めるようになる。選ばれなかった誰かを忘れないように、と。自分と世界との狭間でアイデンティティが揺らぎ続けるアイ。頭の中では「この世界にアイ(i)は存在しません」という数学教師の言葉が繰り返し響いていた。
アイほどではないにしろ、災害やテロなど悲惨なニュースが続く世界に胸を痛めることが多い私たち。
そこで「自分たちには関係のないこと」と見ない振りをするか、悲劇を受け止め、もう一歩考えを進めるかで得られるものは大きく違う。世界の出来事や身近な不幸に傷だらけになりながらもアイデンティティを掴み取り「アイ(=愛)は存在する」と宣言したアイの生き方に自分自身を重ねたい。
『i アイ』
西加奈子
ポプラ社
680円(税別)
Amazon
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