Interview with Richard Reed Parry about “QUIET RIVER OF DUST VOL.2″/リチャード・リード・パリー『QUIET RIVER OF DUST VOL.2』来日インタビュー
NeoL / 2019年11月30日 12時0分
Interview with Richard Reed Parry about “QUIET RIVER OF DUST VOL.2″/リチャード・リード・パリー『QUIET RIVER OF DUST VOL.2』来日インタビュー
2014年フジロック のヘッドライナーを飾ったことでも知られるアーケイド・ファイアのマルチ・インストゥルメンタリストである、リチャード・リード・パリー。バンドとして初来日公演を敢行して以降、大の親日家となった彼が発表した初のソロ・プロジェクトは、我々が親しんできたさまざまな風景によってもたらされた音楽になっているという。先日は、初のソロ名義での単独公演を敢行し、イノセントでありながらも壮大な生命の輝きを描き、大きな反響を呼んだ彼が、作品について、また日本での特別な体験を語ってくれた。
──昨年リリースされたVol.1に続くソロ作『QUIET RIVER OF DUST VOL.2』は、日本の風景からインスパイアを受けて制作されたものなのですか?
Richard : 日本の景色だけでなく、そこから生み出されるフィーリングや空気にインスパイアされたと言った方がいいのかもしれない。本当にさまざまな感情を喚起させるもので驚かされ、そして自然に楽曲のアイデアへと結びついていったんだ。
──特に影響を受けた風景や出来事はありましたか?Vol.1には「賽の河原(死んだ子どもが行く所といわれる冥途の三途の川の河原)」をタイトルにした「Sai No Kawara (River of Death)」という楽曲がありますが。
Richard : この作品シリーズは決してコンセプチュアルなものではなくて、形のない感覚、フィーリングを音にしただけというか。日本を訪れて得た美しくてハッピーな気分は、自分の深い部分と密接につながっているような気がしたんだよね。至るところを歩いているだけで、力がみなぎっていくような感じがしたんだ。ゆえに、特に影響を受けた風景を挙げることはできないよ。「賽の河原」に関しては、ある時温泉へ行く途中で看板に英語で「River of Death」と書かれているのを見つけて「何だこれは?」と思い、後でネット検索して意味を調べてみると、自分が今までぼんやりと思っていたアイデアがひとつにつながったというか。最後のパズルのピースが見つかった気分になって、これら作品へと結びついていったんだよね。
──2つのパートに分けた理由はありますか? Vol.1は森や大地と言った印象の楽曲が多く、Vol.2は川から海につながっていくような流れを感じる仕上がりですね。
Richard : 最初は2つに分けるつもりはなかったが、制作していくうちに想像以上に楽曲が完成したから、そうしようと思ったんだ。2つにするにあたり、ひとつは「緑」を感じさせるものというか。リアルな世界を描いたものを収録した。Vol.2では、我々が触れることができない世界を音にした感じだね。それで「Sai No Kawara (River of Death)」がふたつの世界をつなぐイメージ。子どもが生と死の境界線に立っていて、そこで何が見えるか?ふたつがどうつながっていくのかを表現しているんだ。
──Vol.1とVol.2で作り方に違いはありました?
Richard : う〜ん、いい質問だね(苦笑)。
──ではアーケイド・ファイアと、ソロでの音作りの違いは?
Richard : それも難しいな(苦笑)。
──わかりました(笑)。では、本作には、今回の来日公演でもサポートされています本田ゆか(チボ・マット)さんや、ザ・ナショナルのメンバーも参加されていますよね。彼らとのセッションはいかがでしたか?
Richard : それだったら答えられる(笑)! 今回はいろんなミュージシャンとセッションをしながらも、初めてソロとして完成させた作品シリーズなんだ。バンドの時は、アルバムをリリースするとか「目的」を持ってスタジオに集まるわけだけど、今回はそういうことを考えずに自分が作りたい音だけにフォーカスして取り組んだ。何が起こるかわからないけど、本能の赴くがままに制作したことが初めてだったんだよね。だから制作は、新しい水の中に飛び込んでいくような感覚の連続だった。
──そのことで得たもの、見えた新しい風景はありますか?
Richard : これまでアーケイド・ファイア以外にもさまざまなプロジェクトに参加してきていたけど、そこで充分なクリエイティブ・スペースがあるものだと信じきっていた。でも今回やってみてそうじゃないことに気づいたんだ。そこだけに自分を閉じ込めてしまっていたら、アイデアが枯渇すると思うようになった。このソロ・プロジェクトを経験したことによって、自分自身で新しい「クリエイティブ・スペース」を作ることの大切さを知ったし、実際に構築することができたと思う。そこには人はもちろん空気など、何もかもが自由に出入りできる大きな吹き抜けの窓があるんだ。
──また、このアルバム・シリーズを通じて「生と死」に向き合ったと思うのですが、そのことで人生観にも変化はありましたか?
Richard : 新しい何かを得たというよりは、自分のスペースが広がってきたという感じなんだ。そして新しいスペースを埋められるのが「音楽」であることに気づいたというか。そのスペースが求めているのが「音楽」であるということにね。結果、これらアルバムが完成したんだよ。
──なかなか深いお話ですね。
Richard : うん。例えば瞑想をしていると感じる景色が風景がある。でも、それを得るためには瞑想することが必要なように、僕にとって音楽とはアイデアの「スペース」を与えるもの。そのアイデアを得るためには音楽が必要で、そういう相互関係を築きながら活動していけたらと思っているんだ。
photography Yosuke Torii
text Takahisa Matsunaga
edit Ryoko Kuwahara
Richard Reed Parry
『QUIET RIVER OF DUST VOL.2』
発売中
https://richardreedparry.com/
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https://www.neol.jp/music-2/
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