2019年8月の出来事:「20年間の映画監督禁止令」を受けた映画監督の衝撃作から考える「表現の自由」
NeoL / 2019年12月23日 8時0分
2019年8月、あいちトリエンナーレ2019内の企画展「表現の不自由展・その後」が開催から3日間で中止に追い込まれた。同企画展はさまざまな理由から国内の美術館での展示が許されなかった作品を集めたもの。展示作品の中には慰安婦問題のシンボルである「平和の少女像」や天皇をモチーフとした作品などが含まれており、その是非についてインターネットを中心に議論が沸騰。「安全を確保できない」と判断した主催者側が中止を決定した。その後も、多くの著名人や政治家が作品について言及し、果ては補助金の不交付にも発展するなど、表現の自由のあり方について物議を呼んだことは記憶に新しい。
そしてこの映画『人生タクシー』は、イラン・イスラム共和国で作られた作品。同国ではあらゆるメディアが政府の監視下に置かれており、反体制的なジャーナリストや宗教的規範に沿わない人間が投獄されるなど表現の自由が強く制限された状況となっている。
本作の監督であるジャファル・パナヒも、自身の作品である『オフサイド・ガールズ』などが反体制的と政府から評された結果、「20年間の映画監督禁止令」を受けた身だ。しかし、パナヒ監督はこれに屈することなく、自宅軟禁中の生活を撮影したドキュメンタリー作品『これは映画ではない』など、束縛の間を縫うように活動を続けている。
2017年に発表された『人生タクシー』も、パナヒ監督自身が運転手としてテヘランの街中にタクシーを走らせ、ダッシュボード上のカメラから乗客とのやりとりを撮影するという野心的な作品だ。教師と路上強盗、海賊版DVD業者、大学生、交通事故にあった夫妻など様々な人々が監督と会話を交わす中で浮かび上がってくるのは、生身のイランそのもの。生き生きとしたテヘランの街並みの映像も貴重なものだろう。
「映画ではない」にもかかわらず、ある意味、映画以上にドラマティックで鮮烈な1本。
『人生タクシー』
本編82分
■DVD(本編ディスク1枚組)3,800円+税
発売元:バップ
販売元:バップ
配給:シンカ
提供:東宝東和
協力:バップ
関連記事のまとめはこちら
https://www.neol.jp/culture/
この記事に関連するニュース
-
ワン・イーボー&ホアン・ジンユーが夢の競演! アンドリュー・ラウ製作総指揮「FPU」25年1月公開
映画.com / 2024年9月18日 11時0分
-
テレグラム、強権国家では民主化運動の「命綱」 戦場で活用のロシアは仏の捜査介入に圧力
産経ニュース / 2024年9月16日 16時3分
-
多様性を追求し、新しい扉開く 第35回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者5人の横顔
産経ニュース / 2024年9月10日 18時0分
-
アカデミー賞国際長編映画賞シンガポール代表となった青春映画『国境ナイトクルージング』本予告解禁
クランクイン! / 2024年9月5日 11時0分
-
浅野忠信主演、仏日西白合作映画『レイブンズ』来年3月に公開決定! 妻役は瀧内公美
クランクイン! / 2024年8月22日 10時0分
ランキング
-
1「ぜんたーい、止まれ!」その入場行進なんのため? 元体育主任が語る、運動会で廃止すべきこと3つ
オールアバウト / 2024年9月20日 20時35分
-
2メルカリで「マイナス評価」が1つでもあったら売れなくなる? 購入を敬遠される可能性も……
オールアバウト / 2024年9月20日 20時40分
-
3「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
4「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
53COINSの高級ドライヤー、めちゃ軽くて手が疲れにくくていいけど……
女子SPA! / 2024年9月19日 15時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください