10年にも及ぶアムステルダム国立美術館改修工事の裏側を記録したドキュメンタリー
NeoL / 2020年3月22日 21時50分
レンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」「手紙を読む青衣の女」などの名作を所蔵していることで有名なアムステルダム国立美術館。そのコレクションはルーブル美術館や大英博物館と肩を並べると言われている。
それゆえ、年々増加するコレクションと来館者に対応すべく、アムステルダム国立美術館は1855年の開館以来、幾度とない拡張工事を余儀なくされ、その結果、1990年代にはすでに迷路のようになっていたという。そこで、オランダ政府は2000年に大規模改修計画を発表。巨額の予算と4年という時間をかけ、著名建築家の指揮のもと最先端の美術館として生まれ変わる計画だった。
予定通り2003年からリニューアルのための全館休館に入ったアムステルダム国立美術館。しかし、リニューアルオープンの予定だった2008年を過ぎても計画は完了せず、実際にオープンしたのは2013年になってから。なぜ改修に10年もの歳月を必要としたのか?
その内幕を記録した映画が『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』だ。
本作はアムステルダム国立美術館の改築工事の記録を依頼された監督が、図らずもプロジェクトの大混乱に立ち会うこととなり、その模様をカメラに収めたドキュメンタリー映画。計画の躓きの発端となった、美術館を貫くサイクリングロード閉鎖を巡る地元住民の反対運動から、美術館内部での展示品やスペースについての議論まで、様々な事態に直面し苦悩する館長や建築家、個性豊かな学芸員たちの姿が克明に記録されており、その悲喜こもごもな人間模様はフィクション作品以上のエンターテイメント性を獲得している。
また、美術館改修に伴う大騒動から垣間見える「議論を尊ぶ」オランダの国民性も興味深い。特にサイクリングロード閉鎖の一件では、大規模な国家プロジェクトである美術館改修と、いわば一部住民の趣味趣向に過ぎないサイクリングとが並列に扱われ、お互いが対等な立場で喧々諤々の議論を交わしている姿が印象的だった。意見が熟すまでオープンは待つ、まさに民主主義が深く根付いているオランダならではの光景だろう。
さて、長年の議論の末、美術館と反対派住民の間でどのような結論が導き出されたのか?それは本作を観て確かめて欲しい。
『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』
本編約117分+映像特典(劇場予告編)約3分
音声:オランダ・英語・スペイン語ドルビーデジタル(ステレオ)
2008年
原題:The New Rijksmuseum(英語題)・Het Nieuwe Rijksmuseum(オランダ語題)
販売元: キングレコード
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