メキシコ大統領選、左派ロペスオブラドール氏が勝利 期待される腐敗撲滅

NewSphere / 2018年7月6日 9時0分

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メキシコ大統領選、左派ロペスオブラドール氏が勝利 期待される腐敗撲滅

 今月1日、腐敗と暴力の横行に対する強い憤りを抱くメキシコの有権者が、同国の政治に激震をもたらした。左派の扇動者が大統領に選ばれ、現政権の打倒と、貧困に苦しむ国民のための統治を叶える大きな権限を手にしたのである。

 出口調査の中でも特に顕著な結果を見ると、ポピュリストのアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏が他候補らに16~26ポイントの差をつけていた。他候補は、全国選挙管理委員会(National Electoral Institute)が正式に結果を発表する前に、早くも敗北を認めた。また、上下両院議員選では、ロペスオブラドール氏を推す左派連合が圧倒的勝利を収め、両院で過半数を大きく超える議席を獲得するだろうと予測された。

 メキシコに変革を起こし、同国を支配する「権力のマフィア」を政権から追いやると宣言していたロペスオブラドール氏は、エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領が所属する制度的革命党(Institutional Revolution Party、PRI)に対する国民の不満が噴出したことで勢いを得て、世論調査では選挙キャンペーン開始時から他候補をリードしていた。

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 左右両派連合が推す保守派のリカルド・アナヤ氏、PRIのホセ・アントニオ・ミード氏は、全国で投票締め切りとなって間もなく、敗北を受け入れた。

 アナヤ氏はスピーチで支持者に向け、「流れはアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏に向いている……彼の勝利を認めよう」と発言。

 その数分前にはミード氏が、「メキシコが良い国になるように、彼が最高の成果をあげることを祈っている」と述べた。

 ロペスオブラドール氏は、選挙本部のバルコニーから支持者に手を振り、その後、専用車に乗り首都中心部へと向かった。

 メキシコシティでは、ロペスオブラドール氏の支持者らが勝利を盛大に祝い始めていた。中心部に位置するレフォルマ通りの並木道に、『ビバ、メキシコ!』の曲に合わせてクラクションを鳴らし、窓やムーンルーフからメキシコの国旗を掲げた車が行き交った。

 数千人もの住民が、ソカロと呼ばれ親しまれている広大な中央広場に押し寄せた。64歳の元市長が、自身の支持者に向け、1日夜にそこに集結するよう呼びかけていたのだ。大勢の人々が、マリアッチ楽団の演奏に合わせて踊った。

 元講師のスサナ・スニガ氏は、メキシコは今、1世紀前に起こったメキシコ革命に似た瞬間を迎えていると言い、顔を輝かせた。

「国民はうんざりしている」とスニガ氏は言う。「それがこの結果をもたらした」

 ドナルド・トランプ米大統領はツイッターを更新し、祝福の言葉を綴った。「彼との仕事をとても楽しみにしている。アメリカ、メキシコ双方の利益に繋がることが、たくさんできるはずだ!」

 コンスルタ・ミトフスキー社(Consulta Mitofsky)社が実施し、テレビサ(Televisa)が報じた出口調査では、知事選が実施された8州のうち少なくとも4州で、ロペスオブラドール氏率いる国家再生運動(Morena)の候補者が当選すると予想。さらにメキシコシティの市長選でも勝利を収めるとした。メキシコ中部にあるグアナフアト州では、国民行動党(National Action Party)候補者の当選を予想した。

 ミトフスキー社は、国家再生運動の候補者が、定員100人の上院で56~70議席、定員500人の下院では256~291議席を獲得する見込みだと発表した。

 ロペスオブラドール氏は、氏名のイニシャルをとって「アムロ」の通称で知られる。2006年、2012年の選挙に敗退し、大統領選に立候補するのは今回が3度目だ。

 2006年の大統領選では、他候補が、ポピュリストであるロペスオブラドール氏の発言を「メキシコにとって危険」だと批判し、有権者もこの意見を支持した。2012年には、長きにわたり与党に君臨していたPRIが、裏取引を止め、多発する暴力を鎮静できるだろうという有権者の期待を集め、政権に返り咲いた。

 しかしペーニャ・ニエト政権は6年経っても、有権者の期待に応えることはなかった。

 現体制に対するメキシコ国民の不満は募りに募っていた。ロペスオブラドール氏だけでなく、アナヤ氏、ミード氏、さらに無所属で立候補した「エル・ブロンコ」ことハイメ・ロドリゲス氏まで、候補者の誰もが、本物の変革を象徴する大統領になると、強く訴えた。

 その結果、有権者にはロペスオブラドール氏の、「権力のマフィア」を相手にした強気な言葉が最も頼もしく響いた。

 外交問題評議会(Council on Foreign Relations)でラテンアメリカ担当上級研究員を務めるシャノン・オニール氏は、「メキシコの庶民は、現体制の統治方法に憤りを感じているため、ロペスオブラドール氏の主張が響いた」と言う。「同氏は、変革を求めていない国民の心も掴むことができていた」

 ロペスオブラドール氏は、12年にわたりほぼ休むことなくキャンペーンを続けてきたが、今回は発言の内容とその伝え方を、いずれもいくらか柔らかいものにした。貧困に苦しむ国民のための統治を実現し、横行する政治腐敗と闘うと宣言。さらに、ペーニャ・ニエト政権が進めていたエネルギー改革、教育改革を一からやり直すという公約は撤回した。

 また、高齢者には支援金の増額を、若者には奨学金の提供または有給訓練の実施を約束した。

 サンディエゴと国境を成すメキシコ北西部の都市、ティフアナでロペスオブラドール氏に票を投じた29歳の弁護士、マリアノ・バルトリーニ氏は、「選挙に勝利した今、彼を信じるこの新たな世代を裏切るようなことがあってはならない」と言う。「彼が過去の選挙戦を上回る票を獲得できたのは、支持者である我々若者のおかげだ」

 ロペスオブラドール氏に対抗する候補者らは、同氏の介入主義的な経済政策によりメキシコが数十年前のような状態に戻ってしまい、大惨事を招く恐れがあると主張した。

 アナヤ氏を支持する26歳のフアン・カルロス・リマス氏は、「候補者の中には、実現できないことを提案している者がいるのではないかと懸念している。彼らの提案を実行に移すには、多額の費用が必要だからだ」と言う。

 ペーニャ・ニエト氏は1日、自身に票を投じ、誰が勝利しようと、メキシコを変えるために協力すると約束した。

 ニエト大統領は報道陣に対し、「メキシコの大統領とその政府は、礼節を重んじ、選挙を勝ち抜いた議員らをサポートするだろう」と述べた。

 各級政府のポストを同時に決める今回の選挙は、メキシコ史上最大規模となったと同時に、政治腐敗、汚職など、国民の税金を着服する不正行為の是非を問う国民投票となった。

 PRIの進める市場志向型の経済改革は、人口の約半数が貧困という国においてはまだ大きな効果を発揮していない。ミード氏は「泡沫」候補として指名されるまで、PRIには一度も在籍していなかったにもかかわらず、選挙キャンペーンでは、同党に対する国民の不満に足を引っ張られ、苦戦を強いられた。

 アナヤ氏はテクノロジーと新発想の政策を軸とし、若年層の票を集めようとした。しかし大統領選への出馬が、党首を務める保守派政党の分断を招く結果となっており、新たに手を組んだ左派の民主革命党(Democratic Revolution Party)が、アナヤ氏とは正反対のイデオロギーを掲げる他の候補に投票するのではという疑念があった。

 1日の選挙は、初めて無所属の候補者が出馬した大統領選挙となった。

 また、国外に居住するメキシコ人が、上院議員選などの下級選挙に投票できるようになったのも、今回が初めてだ。181,000人超の国外居住者に投票用紙が発送され、先月29日朝の時点で、2012年の倍にのぼる97,000枚の投票用紙が全国選挙管理委員会に届いた。

 1日の投票は概ね無事に終了しており、選挙当局から大規模な事件が発生したという報告はなかった。

By MARK STEVENSON, PETER ORSI and CHRISTOPHER SHERMAN, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

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