エジプト、シリア、ケニア、イラン:90年代の再来? - 酒井啓子 中東徒然日記
ニューズウィーク日本版 / 2013年9月25日 11時1分
デジャブ、といえば、期待が持てる「いつか来た道」もある。イランだ。6月に大統領選に勝利したロウハーニ・イラン大統領が国連会議のために訪米する。ここでオバマ大統領と会談すれば、イラン革命後の国交断絶以来の、快挙だ。オバマとしてはシリアでの失策をカバーしたいところでもあろう。16年前、イラン大統領に就任したムハンマド・ハータミーが、「文明の対話」を打ち出して米政権との関係改善を謳った。彼の改革姿勢と柔和な表情は、「微笑み外交」と呼ばれたが、ロウハーニの微笑みがハータミーのイメージを模倣しているのは、明らかだろう。
にもかかわらず、ハータミーの対米外交は身を結ばなかった。そこで、活躍したのが、日本である。2000年、イラン大統領として42年振りにハータミーが訪日した時、日本政府がイランへの円借款供与を決めただけでなく、ハータミーには東京工業大学から名誉博士号が送られた。さらに国会で演説を行ったが、中東からの国家元首が日本の国会で演説を行ったのは、始めての出来事である。
つまり、関係改善に最適の大統領がイランに出現したのにうまく対応できなかった米国に比して、日本はしっかりイランとパイプを作った。米国が足踏みする相手と米国をつなぐ役割を果たそう、という余地と意気込みが、90年代の日本にはあったのである。
ロウハーニとオバマが直接会談し、米・イラン関係に進展が見られれば、国際政治的には大きな一歩だろう。だが、直接対話の場ができたら日本が仲介する余地は、なくなる。中東と米国の間で、日本の役割はいったいどうなるのか、誰か真剣に考えているのか?
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