派遣労働の規制は撤廃し、多様な雇用形態を労働者が選べる社会に - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月8日 14時1分
法学者は「国民は法に従うものだ」と考え、立法する側の意図の通りに国民が動くと考える傾向がある。これは交通ルールなどでは正しいが、市場経済は法律では動かないのだ。たとえば「すべての企業は生産を倍増しなければならない」という法律をつくったら、GDP(国内総生産)は2倍になるだろうか。
市場は需要と供給で動くので、供給をいくらコントロールしても、需要はコントロールできない。これが社会主義の失敗した理由である。労働市場も同じだ。労働供給の規制を強化して「正社員を増やせ」といえば正社員が増えると思っている労働法学者は、社会主義と同じ錯覚に陥っているのだ。
供給側の労働者をいくら規制しても、需要側の企業は雇用コスト(賃金や待遇)を上げたくないので、派遣労働を規制したら(もっとコストの高い)正社員が増えるのではなく、もっとコストの低いアルバイトが増えるだけだ。上の図のように、規制を強化するほど非正社員は増え続け、労働者全体の38%を超えた。
規制改革会議の提案しているように、派遣規制は撤廃すべきだ。こういう議論に対して「派遣業者のピンハネがけしからん」という話がよく出てくるが、それは派遣労働の市場が小さく、競争がないからだ。派遣会社が増えて競争が激しくなれば、労働者はピンハネする会社には登録しなくなるだろう。労働者をだますような悪質業者は取り締まればいいことで、警察の仕事である。
雇用が多様化する中で、パートやアルバイトのようにまったく雇用保証のない労働者の比重が増えることは好ましくない。雇用がなくなったら次の職場を紹介し、労働者が専門性を生かして働き続ける派遣会社は、労働者のセーフティネットになっているのだ。派遣労働の規制は撤廃し、多様な雇用形態の中から労働者が選べばよい。「正社員」以外の雇用形態を敵視する労働行政も、これを機に転換すべきだ。
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