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回避されたアメリカの財政危機、「ティーパーティー」の誤算 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月17日 15時27分

(5)最大の敗因は「悪いのはオバマだ。医療保険改革にこだわって対話を拒否したからだ」という印象を植え付けようとして失敗したという点です。オバマは、確かに医療保険改革に関しては柔軟ではありませんでしたが、結局のところは敵の先手を打って毅然とした態度を見せて、敵の自滅を待っていたわけです。まるでチャンバラ映画のような手法ですが、剣士オバマを囲んだティーパーティーの面々は、最後は斬られてしまったというわけです。

(6)市場が「脅し」に屈しなかったというのも大きいと思います。今週に関して言えば、株が大きく下げたのは月曜だけでした。一旦まとまりかけた合意が、先週末に「下院議員が一斉に選挙区に戻り、交渉を上院に投げた」ことで悲観論が出たのですが、以降はもう市場は下げませんでした。デッドラインの「17日」に至っては、議会の議決を見る前にNYダウは200ドル以上も上げているのです。それだけ民間の景気が力強いということも言えるし、市場として「共和党にはアメリカ経済を破滅させる度胸はない」ことを見破られていたとも言えるでしょう。

 そんなわけで、政治的にはオバマの勝利だと言えます。少なくとも短期的にはそうです。では、これでアメリカの政治は安定するのでしょうか? そう安心はできません。来年2014年の1月にやって来る「再度の政府閉鎖の危機」の可能性、そして2月にやって来るかもしれない「再度の債務上限危機」に向けて、どんな政治的な合意ができるかは、これまた「政界の一寸先は闇」という感じがします。

 ティーパーティーの怨念は深く、例えば「張本人」のテッド・クルーズ議員は選挙区であるテキサスでは「大人気」になっており、今でも2016年の大統領選へ向けて担ぐ動きがあるなど、まだまだ「大人しくはならない」という気配もあります。「ティーパーティー系」の議員の中には「問題は我々共和党が強硬論でまとまらなかったからだ。戦犯は党内の穏健派だ」などというアジを飛ばしている人もいるそう(CNNの報道による)ですから、穏やかではありません。

 結局は景気なのだと思います。1990年代の「均衡予算バトル」の際も、歳出カットを強く主張したギングリッチ下院議長(当時)率いる共和党が政争に負けた後に、ITと国際金融を中心とした「ニューエコノミー」が急速な景気拡大を果たす中で、ビル・クリントン政権は、「モニカスキャンダル」を乗り越えて高支持率のまま任期を終えることができました。

 オバマ政権が似たような「ハッピーエンディング」を迎えられるのか、その前に2014年初頭までの「予算と財政のバトル」を乗り切れるのかも、結局はアメリカ経済の動向にかかっていると思います。しかしまあ、アメリカというのは、つくづく「シナリオのないドラマ」とか、「締め切りギリギリの綱渡り」が好きな国です。その限りにおいて、アメリカの活力はまだまだ残っているのだと言えるのかもしれません。

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