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自然災害に対する「事前の避難」はどうすれば可能になるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月22日 10時58分

 このようにハリケーンやサイクロン、台風などが上陸する数日前から、「事前の避難」や「事前の対策」を講ずるという考え方は、日本では余り定着していません。ですが、今回の台風27号の接近に当たっては、伊豆大島では26号での豪雨で地盤が水を含んでいるという異常事態を受けて、高齢者などを中心に事前に島外避難を行うようです。これを機会に「事前避難」という考え方が定着していくことを願わざるを得ません。

 では、どうして日本の場合は、これまで事前避難は普及していなかったのでしょうか? またこれから定着させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

 まず、日本にはどうしても風雨が実際に強まって来ないと危機感が持てないという「カルチャー」があるようです。アメリカでは、雷雨の予報が出ただけで多くの屋外行事が中止されるのですが、日系団体のイベントだけは降り始めるまで強行したりすることがあります。「目に見えない情報」より「実際の視覚や触覚の情報で動く」という日本のカルチャーがそうさせているのかもしれませんが、とにかく自分たちはそうした習性という「弱点」を持っているという自覚が必要でしょう。

 もう1つ気をつけなくてはならないのは、こうした「事前避難」に関して「外れた場合のオオカミ少年現象」が起きるということです。ハリケーンや台風の予報は、あくまで予報であり、勿論外れることはあります。その際に「結局来なかったのに、こんなに大げさに避難したり準備したりしたのは失態だ」という種類の非難を「言わない」「言わせない」というカルチャーを作ることが大切です。

 こうした問題は日本だけではありません。ニューヨークでも2012年にハリケーン「アイリーン」が接近した時には、市長が大規模避難を指示したのですが、結局予報が外れたために批判的な意見が出ました。その翌年に「サンディ」が接近した際には、市長は知事と相談して、今度は知事が怖い顔をして「地下鉄を止め、事前避難を勧告する」役を引き受けたのです。同じ市長が指示をしたのでは「アイリーンのように空振りだったら?」などという「不真面目な受け止め方」をされる危険があるわけで、役回りをスイッチしたのです。

 そうした臨機応変な配慮も場合によっては必要でしょうが、いずれにしても「予報が外れて避難指示がムダになった場合にも非難しない」というカルチャーを育てて行くことが大切です。

 本稿の時点では、台風27号が日本列島へ向けて進路を東に変えそうな気配であり、大変に心配です。940ヘクトパスカル、最大瞬間風速70メートル台という勢力は、ちょうど昨年私たちが経験した「サンディ」と同じ規模です。私には、風の轟音と共に大地が揺れるような「あの日の晩」の恐怖が蘇る思いがします。どうか、26号のような惨事が起きないように、伊豆大島に限らず、土砂災害の危険のある地域などでは早め早めの避難をしていただきたいと思うのです。

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