「汚染水」処理は原発事故処理への歯止めない国費投入の始まり - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月29日 15時48分
BAD東電は、今まで支援機構に出資した1兆円を含めて国が資本金の大部分を保有し、名実ともに責任を負う。廃炉や賠償や除染など、すべての事故処理をこの国営企業に一本化し、迅速に処理する。会計処理を民間企業のGOOD東電と分離し、国費投入に歯止めをかける必要がある。
これについて「社債市場が崩壊する」とか「賠償債権が劣後する」などという話を経産省が政治家に流しているが、これは嘘である。社債は一般担保つきなのでGOOD東電の債務にすればよく、賠償債権は国営のBAD東電が負担するので問題ない。「会社がつぶれると事故処理ができなくなる」というのも嘘で、会社更生法で行なうのは債務処理だけだから作業には影響しない。日本航空を破綻処理したときも、飛行機は飛んでいた。
国が責任をもつ前提として、東電を整理して株主が100%減資し、他の債権者も応分の負担をする必要がある。ただ事故の直後に銀行団が東電に緊急融資した2兆円は、経産省の事務次官が「暗黙の債務保証」をしたといわれる問題がネックになっている。これが事実なら、国家賠償するしかないだろう。
破綻処理すれば、こうした事実関係も裁判で明らかになる。破産管財人が裁判所に原子力損害賠償法の第3条但し書き(「巨大な天災地変」の場合の免責規定)の適用を裁判所に申請した場合、それが適用されれば1200億円以上は国が無限責任を負い、国があらためて東電に損害賠償を請求する形になる。
東電を法的整理しないと、資金繰りは遠からず限界が来る。10月末に770億円の借り換え、年末には3000億円の新規融資があり、銀行団も追加融資には難色を示している。ボトルネックになっているのは債権の処理だから、安倍首相が決断すれば事故処理は一挙に進む。
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