不良債権処理を急ぐ中国政府と銀行の思惑は
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月6日 15時42分
中国政府は2010年以降、中小企業向け融資を対象にした不良債権処理のルールも緩和している。
さらに中国銀行業監督管理委員会は今年4月、収益が好調な時には貸出先のデフォルトや不良債権処理に備えてより多くの貸倒引当金を積むよう、また配当の支払いよりも引当金積み増しを優先するよう銀行に促していた。実際、5大銀行は今年上半期に760億ドルという、過去最高の収益を記録している。
クレディ・スイス・ファウンダー・セキュリティーズの在北京アナリスト、馬鯤鵬(マー・クンポン)は「不良債権処理のスピードを上げることで、銀行と当局の利害は一致している」と指摘する。「いざというときのための備えだ」
5大銀行は政府の勧告を受け入れて、第2四半期末には平均で不良債権額の272%に相当する貸倒引当金を積んだ。規制当局が求める150%を大きく上回る水準だ。
さらに、同期中に追加で224億元の融資を不良債権として分類した結果、不良債権の合計額は約3500億元にも上った。
「財務状況の見栄えが良くなるので、銀行は不良債権を処理することに意欲的だ」と、東北証券(上海)のアナリスト、タン・ヤーユィンは言う。
「景気の落ち込みで銀行資産のリスク管理に対するプレッシャーが高まるなか、不良債権の実態をより迅速に帳簿に反映できるプロセス作りを政府は推し進めている」
中国経済への懸念は全般的に強まっている。今年第3四半期のGDP成長率は前年同期比7.8%と、第2四半期より0.3ポイント回復。政府が公共投資を積極的に進めた効果が表れたようだ。しかし年間では7.6%と、99年以降で最も緩やかな伸びにとどまる可能性が指摘されている。
[2013.11. 5号掲載]
ソフィー・ソン
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