厚労省は薬のネット販売規制になぜこだわるのか - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月12日 18時49分
本当のねらいは、薬剤師の免許業務を守ることにある。日本の薬剤師は約28万人で、人口あたりの数は世界で2番目に多く、今後も増え続ける。薬学部を6年生にしたりして参入障壁を高くしているが、楽してもうかる薬剤師は増える一方だ。薬剤師には免許が必要だが、やっていることは医師の処方箋のとおり薬を出すだけだ。昔のように調合するわけではないので、免許の必要性は疑わしい。
ネット販売でも、安全性は保てる。アメリカのAmazon.comでは、今回の規制対象になった薬も日本から買うことができる。医師の処方する処方薬は日本からは買えないが、アメリカ国内からなら、処方箋をEメールで見せれば買える。それが本丸なのだ。
大衆薬の市場は6043億円だが、処方薬は9兆5600億円とその16倍近くある。これはネット販売はもちろん、ドラッグストアでも売れない薬剤師の利権だ。薬価は薬価基準で守られているので、利益が大きい。大衆薬のネット販売を認めると、今度は処方薬もネットで、という話になることを厚労省と薬剤師会は恐れているのだ。
こういうとき官僚が「安全性にかかわる問題だ」というと、政治家もマスコミも思考停止してしまうが、これは放射能と同じ詭弁である。上のように具体的に一つ一つ検討すれば、薬剤師にチェックできてネット販売にできないことは、においをかぐことぐらいしかない。
自民党は了承したが、閣議決定という最後の関門は残っている。三木谷氏もいうように、ここで既得権に妥協したら、アベノミクスの「第三の矢」は終わりだ。安倍首相の政治決断が必要である。
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