「オバマケア」のシステム不具合で窮地に立つオバマ - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月14日 13時38分
トップページから始まって、手続きが完了するまで3時間かかったとか、いや5時間だとか、10月1日の受付開始初日に手続きが完了した人は「6人しかいないらしい」とか、10月末の時点で計画では「50万人が手続き完了」になっているはずが、実際は「11万人弱だけだった」などといった報道が連日のように出てくる始末です。
そんな状況ではあるのですが、オバマ政権は「11月30日までにシステムの正常化を完了する」と言っており、現時点では「罰則を伴う強制移行の期限」そのものを延長するということは言っていません。当初発注した外注先だけでなく、最近ではグーグルをはじめとした一流のIT企業に「急遽プロジェクトへの支援を」という依頼をしているという報道もありますが、とにかく政権としては「意地になっている」ように見えます。担当閣僚のシベリウス保健福祉長官も、何度も辞任説が取りざたされる中、現時点では職にとどまって「対策」に奔走しているようです。
さて、12日の火曜日には、こうした混乱を受けてビル・クリントン元大統領がインタビューの中で「こうなったら強制移行の期限を延長すべきだ」と発言、強気を崩さないオバマ政権側にやや距離を置こうという姿勢を示しました。これを受けて、メディアは「民主党内の批判強まる」などと騒ぎ始め、野党の共和党側は「民主党内での意見が分裂しつつある兆候」だと「論評」しています。その筆頭は他ならぬ「サラ・ペイリン氏」で久々に公の場に出てきたのですが「オバマケアに関してはクリントンの方が正しい」などと、「分裂」を煽っていました。
ちなみに、このクリントン発言ですが、基本的には「ヒラリーを共犯者にしないために泥舟から逃げようとしている」的な政治的な思惑を感じます。ハッキリ言って、それ以上でも以下でもないと思います。むしろ2016年の大統領選を意識するのであれば、当然の行動と言っても構わないでしょう。
2016年ということでは、「分裂状態」であるのは共和党の方も同じです。ティーパーティー系の政治家、例えばテキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員などは「だからオバマケアはダメなんだ」と相変わらずの対決姿勢を見せる一方で、今や全国的な人気を誇るニュージャージー州のクリスティ知事(中道系)は「与野党の政争で国民が迷惑していることの一つ。だからワシントンはダメなんだ」と吠えており、全くまとまっていません。
もっとも、共和党全体としては今回の「システムダウン」問題は、全くの敵失であり、特に大騒ぎしないで静観していればオバマの方がどんどん自滅するという計算もしているようで、「オバマ批判で大いに盛り上がっている」というわけでもないようです。
そんな中、政権としては「11月30日」という自分たちが決めた「システムの正常化期限」が守れるのか、それともクリントン元大統領の言うように諦めて「強制移行期限の延長」をするのか、決断を迫られているわけです。オバマの判断が注目されます。
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