政府はどうして「秘密」を持ちたがるのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月21日 10時40分
自分たちが無能であり、制度の整備を怠っていたから、つまり政府が政府として必要な制度インフラと、情報収集の仕組みと、判断し実行するだけの人材力に欠けていたから、つまり政府というのは「無能」であるから「秘密を作りたがる」のです。
オバマ政権もそうです。オバマ政権は、相当に秘密主義の害毒に汚染されてきていますが、例えば現在大きなスキャンダルになっている「医療保険改革による新医療保険の入会システム」のトラブルに関しても当初はなんだかんだ言って隠していました。オープンに問題を公表して、なおかつ制度への支持をキープするだけの、そして問題解決にメドをつけるだけの能力に欠けていたから隠したのです。
昨今大変な非難を浴びているパキスタン、アフガニスタン、イエメンなどでの「ドローン(無人機)」作戦も同様です。本来であれば、テロ容疑者が外国に潜伏していたのであれば、当事国との関係で合同捜査を行って、容疑者を拘束し国際法によって、どちらかの当事国の公正な刑事裁判システムで裁くべきです。ですが、外交能力が不足しているために、もっと言えばソフトパワーを含めたアメリカの方針に国際的な説得力が無いために、そうした正攻法が取れないわけです。
そこで全くの超法規的判断として、無人機を外国の領空に侵入させて、容疑者と思われる「ヒトの体温の集合体」を感知すると遠隔操作で爆撃して人間を殺害するわけです。勿論、誤爆も巻き添えも知ったことではなく、多くの場合は攻撃の事実も一切公表しません。相手国の政府から、そして国際世論からの批判には耐え得ないことを知っているから伏せるのです。
そのような行動が中長期的には米国に反発する世論を拡大して、かえって危険を増大することも分かってはいるのでしょうが、CIAやNSAの官僚システムから「危険人物に関する諜報」が上がってくると、放置して大規模なテロが再発すると国内で批判されるからという「恐怖心から」やってしまうわけです。無能に加えて、そのような脆弱性も伴っていると言えるでしょう。
政府が秘密を作りたがるのは、原発や軍事外交問題だけではありません。多くの場合は秘密の背後には、利害関係にまみれた腐敗があるのだと思います。本人は必要悪だと思っていても、世論の批判に耐え得えないということは、要するに悪だと分かっているわけです。秘密を作りたがるメカニズムはそのようなものであり、昔から言う「絶対的な権力は絶対的な腐敗を招く」という言葉と裏表を成していると思います。
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