特定秘密保護法案をめぐる議論、3つの疑問とは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2013年11月28日 13時21分
この事件が良い例であるように、またTPP交渉の経過が申し合わせで厳秘扱いになったように、現代の外交問題に関しては、「国際協調や対立回避」のために情報をふせることが多いわけです。仮に「保守」という思想が「より自国の利益優先」だとか「近隣諸国との対立の激化も辞さず」だとしたら、「やたら国際協調をしたがって他国に譲歩しがちな」政府の秘密を暴くことに正当性があると考えることも多いはずです。どうしてその「保守」が「政府による情報統制に賛成」という立場になるのか良く分かりません。
3つ目は、どうして「野党」が賛成に回るのかという点です。
先ほどの「どうして保守が賛成するのか?」という話と重なる問題ですが、政権与党が「秘密を持ちたがる」のは理屈としては分かります。ですが「野党」でありながら「政府が秘密保持を厳格化する」ことに賛成するというのは良く分かりません。「野党」というのは、政権交代の受け皿を作りながら現政権への批判者として存在しているわけであり、政権が隠そうとしていることを暴くのも使命の1つであり、またそれが政権奪還の手段でもあるはずです。
それにも関わらずその野党が賛成に回るというのは、すぐにでも政権を取るなり、連立に加わって「秘密を持ちたがる」側になることを想定しているからなのでしょうか? どうにも理解ができません。
こうした問題点というのは、そのまま法案の中身に関しての議論が進まないということと表裏一体をなしています。更にいえば、日本という国の「政体=政権の正統性」、「主権者から行政府への委任の程度」といった「国体=国のかたち」に、実は合意も統合もないということから出てきた問題のようにも思えます。
要するに日本というのは「お上」と「庶民」の対立、「藩閥の流れを汲んだ確信犯的な開発独裁(現在は独裁的手法による秩序ある衰退)」と「アジア的封建制からの脱出実験に自分探しをかけた野党精神」の対立、あるいは中央と地方、高齢者と若者、国際志向と国内志向といった「2つの正反対の方向性による対立とバランス」の中に「国体=国のかたちの本質」があるのだと思います。
今回の「特定秘密保護法」論議を取り巻く動向は、その「対立とバランス」が著しく均衡を失っているということを示しています。この点から考えても、現在の流れの延長で法案成立へ持って行くのは余りに拙速だと思います。
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