巨大台風直撃でもフィリピン経済の好調は続く
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月10日 16時8分
超大型台風ハイエン(台風30号)に襲われ、まだ復興の道半ばのフィリピン。今後さらに巨大な天災に襲われる可能性があるというが、好調のフィリピン経済は、その衝撃を乗り切れるとみられている。
先月8日に同国中部を直撃したハイエンによる死者は5500人以上。負傷者は2万6000人を超えた。政府の推定によれば、現在も1700人以上が行方不明のままで、犠牲者の数はさらに増えるとみられる。
それでも経済的損失は推定2億3000万ドル前後で、1900人強の死者を出した昨年12月のボーファ(台風24号)の9億ドルを大幅に下回る見通しだ。
最も甚大な被害を受けたビサヤ諸島は、ココナツやコメ、サトウキビの栽培が主力産業の農業地帯。オーストラリア・ニュージーランド銀行の調査によれば、フィリピンのGDPに占める割合は2・2%にすぎない(12年時点の数字)。
同行は今年のフィリピン経済の成長率予測を7・1%から6・8%に引き下げたが、来年の予測は逆に6・5%から6・9%に引き上げた。GDPの4%相当とされる復興事業が本格化する上に、国際援助による下支え効果も見込めるからだ。
さらに国内の他地域からの義援金と、シンガポールや中東諸国などへ出稼ぎに行っているフィリピン人からの送金が被災地の痛みを軽減する役に立つだろう。海外で働く出稼ぎ労働者の送金は、GDPの10%を占めると推定されている。
フィリピンはもはや「アジアの病人」ではない。製造業の急成長を背景に、今年前半は7・6%の成長を記録した。被災地復興も「間違いなく急ピッチで進むはずだ」と、コンサルタントのビル・バーネットは指摘する。1〜8月にビサヤ諸島を訪れた外国人観光客は300万人以上。観光と不動産は期待の成長分野だと、バーネットは言う。
だが年間約20の台風が襲来するフィリピンは、今後さらに大きな天災に直面する危険性があると、アナリストは警告する。ミュンヘン再保険のリポートによると、80年代に500億ドルだった天災関連の年間損失額は過去10年間で2000億ドル近くまで上昇した。低・中所得国の損害は特に大きかったという。
「ハイエンは、気候変動がさらに極端で過酷な気象現象を生み出すことを浮き
彫りにした。最大の被害者は貧しい人々だ」と、世界銀行のジム・ヨン・キム総裁は声明で指摘した。
それでも当面、被災地は台風の経済的損失が思いのほか少ないことに胸をなで下ろすだろう。
[2013.12.10号掲載]
アンソニー・フェンソム
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