日本とドイツ、「戦後の国のかたち」の違いとは何か? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年2月25日 11時36分
一方で、ドイツに見習わなくてはならない姿勢というのもあると思います。ドイツは戦後の長い時間、ずっと「ナチズムを生み出した風土」への反省的な分析を続けています。「ドイツ連邦共和国」は国家として第三帝国を継承することはなかったのですが、民族として、文化圏としての反省的な姿勢から外れることはありませんでした。
これに対して、日本の場合は「戦前を否定する勢力は東側の軍事同盟の影響下」にあった一方で、「自由経済を志向する側は戦前的な価値観に甘い」という奇妙な「冷戦的な分裂」、つまりは一種の思考停止が続いたわけです。自分の力で自由な発想で「枢軸に与して亡国に至った」歴史や、「周辺国の名誉を毀損し続けた」あるいは「成熟した経済社会を築けなかった」歴史への反省を行うということについては、ドイツほどの徹底は出来ていません。
要するに、ドイツとの比較論ということで言えば、公的な「国のかたち」に関して日本は戦前との連続性はあるものの、戦後は自らの行動によって名誉あるポジションに自分を持っていくことができたわけで、戦前との非連続だけでなく分裂の苦しみを経験したドイツの例とは「正常化のプロセス」に違いがあったわけです。公的な、あるいは法的な問題としての戦後処理ということでは、全く違うのです。
従って、現在の日本は「国のかたち」が戦前と連続した面があるから「枢軸国」であるとか、ドイツに見習って周辺の国境紛争では全面譲歩せよ、というような主張は一蹴して良いと考えます。その一方で民族や文化圏としての「歴史への反省的な姿勢」ではドイツに学ぶべきであると思います。
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