STAP細胞事件から見えてきた現代の科学研究の死角 - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月12日 15時24分
ちょっとした研究なら、疑問があっても放置される。小保方氏が2010年に早稲田大学に提出した博士論文には、20ページ以上にわたって別の論文の丸ごとコピーがあり、参考文献も無関係な論文のコピーであることが指摘されたが、今まで誰も気づかなかった。
彼女は同様の研究成果を今まで何度も発表しており、一度も問題にはならなかった。この分野は国際競争が激しいので、本人は「とりあえず早めに発表して後から確認しよう」と考えたのかも知れない。同時に特許も出願しており、成果をアピールして「特定国立研究開発法人」になろうという理研の戦略もあったのではないか。
ところが権威あるNatureに掲載されたため、過去の論文との類似が世界のソーシャルメディアで検索された。今回の事件の発端になったのは海外の査読サイトの指摘で、日本でもまとめサイトが第一報を出し、マスメディアがそれを追いかけている。
もちろん最終的に捏造が確認されたら、学者生命を失う。それは彼女の自己責任だが、ここまで問題に気づかなかった理研と早大の罪は重い(特に本文と参照文献がリンクしていないのは査読で気づくはずだ)。データの捏造をすべてチェックすることは困難なので、今後の教訓にするためにも彼女を徹底的に査問し、きびしく制裁すべきだ。
このような論文捏造は海外ではよくあり、日本の管理体制は甘かった。いま指摘されている疑惑が事実だとすれば、小保方氏は理研を解雇されて博士号も剥奪されるだろう。性善説を捨てて信賞必罰を徹底し、情報管理体制を整備することが、同様の事件の再発を防ぐために不可欠である。
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