中国から東南アジアへ進むマネーシフト
ニューズウィーク日本版 / 2014年3月25日 12時15分
アジアにおける外国直接投資(FDI)の流れに変化が生じている。13年の外国投資は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国向けが初めて中国向けを上回った。ASEAN(東南アジア諸国連合)でも特に経済規模の大きい「ASEAN5」と呼ばれる国々だ。しかもASEAN5に対する投資のかなりの部分を、今や世界第3位の対外投資国となった中国からの投資が占めている。
バンクオブアメリカ・メリルリンチ・グローバルリサーチの先週の発表によれば、13年のASEAN5に対する外国投資は1284億ドルと12年の1200億ドルから7%増。一方、中国に対するFDIは1176億ドルで12年の1211億ドルから2・9%減となった。
昨年の外国投資はマレーシアで19%、インドネシアで17%、シンガポールで5%増。タイだけは政情不安が影響して12%減少した。フィリピンでは第1〜第3四半期までは188%増と驚異的な伸びを記録。第4四半期は11月の台風30号直撃が響いたものの、それでも通年では24%増加した。
人気の秘密は安い労働力
実はこれらの数字は意外ではない。ここ数年間、投資の流れは中国から東南アジアへシフトする傾向にある。中国への投資は11年の1240億ドルをピークに減少に転じ、外国企業は生産拠点を中国から本国に戻すか、周辺のマレーシアやタイなどの国々にシフトしている。
こうしたシフトの大きな理由は、人口構造と賃金の面でASEANのほうが魅力を増していることだ。中国では長年の一人っ子政策の影響で急速に高齢化が進んでいるのに対し、ASEANでは若い労働力がはるかに安い賃金で確保できる。
しかしより大局的な見方をすれば、中国がそれだけ豊かさを増しており、外国に投資する段階に入ったともいえる。
中国の対外投資は2000年には世界で第32位だったが、中国政府が対外投資拡大を図る「走出去」戦略を打ち出した01年以降、急速に増加している。11年には世界第6位となり、12年にはアメリカと日本に次いで第3位(878億ドル)となった。
香港の対外投資は単独で世界第4位にランクインしており、香港と中国本土を合わせると12年の対外投資は1680億ドルと、日本を抜きアメリカに続く2位になる。
投資の大半は東南アジア諸国に対する投資だ。外国企業と同様、中国企業にとっても東南アジアの若くて安い労働力は魅力を増しており、中国からASEANへの投資は今後数年増加が続きそうだ。
ASEAN5以外の東南アジアの国々でも中国からの投資は急拡大している。ラオスと中国を結ぶ総額70億ドルの高速鉄道プロジェクトは、費用の大部分を中国が負担することになっている。ミャンマー(ビルマ)への投資は89〜2012年度の累計が約420億ドルだが、140億ドル超が中国からだ。
「メイド・イン・チャイナ」があふれる時代は完全に過ぎ去ったらしい。
[2014.3.18号掲載]
ソフィー・ソン
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