米海軍の「海水燃料」がもたらす大変革
ニューズウィーク日本版 / 2014年4月9日 16時7分
米海軍の科学者たちは数十年の歳月を経て、ついに世界で最も難解な挑戦の1つを解決したかもしれない。それは、海水を燃料に変えることだ。
液化炭化水素燃料の開発によって米軍は、将来の石油燃料への依存を軽減する可能性を持ち、「大変革をもたらすもの」として歓迎されている。そうなれば、軍艦は自ら燃料を作りだし、海上で燃料補給する必要がなくなり、常に100%の状態で任務に当たることが可能になる。
米海軍研究試験所によれば、新しい燃料は当初、1ガロン(約3.8リットル)当たり3〜6ドルほどのコストがかかると見られている。同試験所はすでに模型飛行機の飛行実験を済ませている。
海軍が所有する288の艦船は、核燃料で推進するいくつかの航空母艦と72の潜水艦を除き石油に頼っている。この石油依存を解消できれば、石油不足や価格の変動から軍は解放される。
「非常に画期的だ」と、海軍中将のフィリップ・カロムは言う。「われわれはかなり難しい時期におり、エネルギーを生み出す新たな方法と、いかにエネルギーを評価し消費するかに関する方法の革新に迫られている。安価な石油を無制限に消費できた過去60年のようにはいかない」
次の課題は大量生産
今回の革新的な進歩は、科学者が、海水から二酸化炭素と水素ガスを抽出する方法を開発したことで実現した。ガスは、触媒式排出ガス浄化装置を使って液体にする過程で燃料に変えられる。
「海軍の挑戦はかなり変わっていてユニークなものだ」と、カロムは言う。「燃料を補給するのにガソリンスタンドに行くわけではない。ガソリンスタンドである補給艦が私たちの所に来る。海水を燃料に変える画期的な技術は、兵站のあり方を大きく変えるものだ」
海軍にとっての次の課題は、大量生産を可能にすること。今後、海軍は大学とも協力して、抽出する二酸化炭素と炭素の量を最大化に取り組む。
「初めて、海水から二酸化炭素と水素を同時に取りだす技術を開発することができた。これは大きな進歩だ」と、10年近くこの計画に携わっている化学研究者のへザー・ウィラウアー博士は言う。「私たちはそれが可能であることを証明した。あとは効率性を改善することだ」
クリストファー・ハーレッス
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