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どん底イタリアに奇跡を起こす男

ニューズウィーク日本版 / 2014年4月11日 12時4分



フィレンツェを大改革

 レンツィが政治の世界に足を踏み入れたのは95年のこと。フィレンツェ大学で法律を学んでいるとき、ロマーノ・プロディ(後の首相)の後援組織に関わったのが最初だった。フィレンツェ県知事を経て、09年にフィレンツェ市長に就任すると、次々と改革を打ち出した。

 市会議員の定員を半分にし、自治体関係の公用車を減らして歳出を削減。その一方で公立学校の新設・改修に5100万ユーロ、社会福祉関連事業に2500万ユーロを投じ、幼稚園の待機児童を90%減らすことに成功した。

 フィレンツェ中心部の歴史地区への一般車両乗り入れを禁止し、公衆無線LANスポットを500カ所設置するなどして観光業を推進。年間800万人の観光客を呼び込むとともに、新規雇用の創出にも力を入れた。

 さらにレンツィは、市の歳入を増やすために思い切った措置を導入して議論を巻き起こした。歴史的な施設や広場を、企業のイベントや結婚式の会場として有料で貸し出したのだ。昨年はインド人カップルがベッキオ橋を3日間借り切って結婚式を敢行。周辺住民からは大ブーイングを浴びたが、市には800万ユーロが転がり込んだ。レンツィはこうした政策を、イタリア全体にも広げたい考えだ。

 ただ、フィレンツェは人口37万人の街にすぎないが、イタリアは人口6000万人の国。問題の大きさも桁違いだ。イタリアの今年の成長率はわずか0.6%で、公的債務はGDP比133.2%に達する見通しだ。失業率は13%近く、若者に限定すれば40%を超える。

 レンツィは経済の抜本的改革を進めるとし、重要な改革を毎月1つずつ実行すると約束した。課題は山積している。投資を呼び込み、企業活動をサポートする一方で、雇用税を削減して雇用を生み出す必要がある。

 選挙法を改正して政治の安定性を高め、司法手続きのスピードアップも図りたい。マフィア対策という避けて通れない厄介な問題もある。「イタリアは単なる美しい観光地であってはならない」と、レンツィは議会で訴えた。

 外交面でも課題が多い。レンツィは首相就任後初の外国訪問先として、EUの「首都」ブリュッセルでもアメリカでもなく、チュニジアを選んで内外を驚かせた。その背景には、7月にイタリアがEU議長国になるときまでに、対アフリカとの対話を再開しておきたいという思いがある。



新ルネサンスに向けて

 アメリカを軽視しているわけではない。レンツィは12年に米民主党全国大会(オバマが2期目の大統領候補に正式指名された)に出席したこともあるほど、アメリカの政治モデルを評価している。

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