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徘徊者をGPSにつないだら

ニューズウィーク日本版 / 2014年4月28日 12時33分

 メリーランド大学のデービッド・グレイ教授(法学)は、政府の情報入手に懸念を示す。「現在は民間と政府のアクセスを隔てる壁がない」と、グレイは指摘する。「子供や高齢者が装置を着けて企業や団体が追跡している場合、政府が要請すれば簡単に情報を入手できる」

 それはバザードも心配だが、今は活動範囲が広がってきた娘の安全のほうが心配だ。キャロラインの手の届かない所に新たに鍵を付けたし、玄関のドアが開いたらブザーが鳴る装置も取り付けた。それでも24時間監視できるわけではない。

 米小児科学会(AAP)の学術誌「小児科学」に掲載された調査研究によると、自閉症児の半分近くに徘徊の傾向がある。また彼らは川や湖など水のある場所に好んで近づく傾向があり、危険な事故に巻き込まれることも少なくない。

 バザードは、政府による盗聴や強制調査などを認めるテロ対策法(いわゆる「愛国法」)が、時限法から恒久法に格上げされることには反対した。地元の学区で、IDカードに追跡機能を付ける計画が頓挫したときは胸をなで下ろした。

 だが、これは違う問題だと、彼女は考えている。「私たちは娘を守らなくてはいけない」と、バザードは言う。「政府の介入抜きでやれたほうがいいかと問われれば、答えはイエスだ。障害者にも権利がある。でも、うちの娘に(政府が支援する)追跡装置を使うかと問われたら、迷わずイエスと答える」

[2014.4.15号掲載]
エリカ・ハヤサキ(カリフォルニア大学アーバイン校助教)


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