スイスで世界最高の最低賃金?
ニューズウィーク日本版 / 2014年5月16日 12時53分
スイスと言えば、高い生活水準と高級時計で知られるが、そこに「最低賃金が世界で最も高い国」という称号が加わるかもしれない。5月中旬に、法定最低賃金を時給22スイスフラン(約2550円)とする提案について国民投票が行われるのだ。
スイスには法定最低賃金の制度はないが、働き手の約90%は時給換算で22スイスフラン以上を得ている。それでも22スイスフランの最低賃金を導入すれば、物価の高いスイスで33万人の低賃金労働者(ほとんどが女性)の生活を楽にできると、提案支持派は主張する。
エコノミストや経済界の反対は強い。スイス有数の大企業ネスレの広報担当フィリップ・エシュリマンによれば、同社は既に国内の全従業員に時給22スイスフラン以上支払っている。打撃を受けるのは、同社の取引先企業だろうと彼は指摘する。
「提案されている法定最低賃金は近隣諸国よりかなり高く、地域や業界ごとの事情も考慮していない」と、エシュリマンは電子メールで取材に答えた。「スイス企業に打撃が及び、ひいては経済全体に悪影響が生じる」
シュナイダーアマン経済相も、提案が通れば、小売り、農業、家事サービスなどの産業に打撃を与え、結果として低賃金労働者を苦しめると主張。国民に反対を呼び掛けている。
最低賃金をめぐり論争が起きているのは、スイスだけではない。米ワシントン州シータックでは最近、最低賃金が全米最高の時給15ドルに引き上げられた。同州シアトルでも同額の最低賃金導入を目指す動きがある。
スイスと同様、中小企業が流出するとの理由で反対する声があるが、地元の非営利団体ピュージェットサウンド・セージの報告書によれば、そうした懸念には根拠がないという。昨年、最低賃金を%引き上げたカリフォルニア州サンノゼ
では、むしろ企業の数が3%増えたと、同報告書は指摘している。
スイス国民の意見は割れている。最近のある世論調査では、52%の人が反対票を投じるつもりだと答えている。
[2014.4.29号掲載]
クリストファー・ザラ
この記事に関連するニュース
-
国民・玉木代表 スイス・チューリッヒの最低賃金、GDP世界2位に驚き「戦略をもっと調べてみたい」
東スポWEB / 2025年1月20日 19時57分
-
最低賃金引き上げが話題だが…「行き過ぎた弱者保護」に潜む、弱者を苦しめるリスク【経済評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月12日 9時15分
-
なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月8日 6時10分
-
石破政権の目玉政策「最低賃金1500円以上」...企業の半数「実現不可能」 財界も賛否両論真っ二つの事態
J-CASTニュース / 2025年1月7日 18時28分
-
米ニューヨーク市、最低時給を2025年1月1日から16.50ドルに引き上げ(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月27日 10時15分
ランキング
-
1主幹事の大和証券もCM見送り=「フジテレビ離れ」止まらず
時事通信 / 2025年1月22日 19時30分
-
2インスタ 17歳以下に一部利用制限
日テレNEWS NNN / 2025年1月22日 19時47分
-
330年ぶりの「政策金利1.0%」時代が来ようとも…お金のプロが「住宅ローンは変動型一択」と断言する納得の理由
プレジデントオンライン / 2025年1月23日 8時15分
-
4フジ・メディア株「異常な出来高」に潜むシナリオ 堀江氏のニッポン放送買収騒動時を連想させる
東洋経済オンライン / 2025年1月23日 9時40分
-
5上司必見「叱られたくない世代」に好かれる叱り方 「人手不足の時代」に問われる叱り方の重要性
東洋経済オンライン / 2025年1月23日 8時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください