不思議なメトロがスタジアムへ走る - 森田浩之 ブラジルW杯「退屈」日記
ニューズウィーク日本版 / 2014年7月1日 13時45分
電車は15分ほど走り、マラカナンの駅が近づいてくる。そのとき、おかしなことに気づく。このメトロは何かが不自然な気がしていたのだが、その理由がわかった。客の出入りがほとんどないのだ。みんなマラカナンを目指しているから、誰も途中で降りない。そして今はブラジルの試合の最中だから、ほとんど誰も乗ってこない。
マラカナンの駅に着く。予想どおり自分の席のゲートまでずいぶん歩かされた。スタジアムに入ると、ロビーのテレビがブラジルの試合を映している。1-1のまま延長だ。先ほど頭をよぎった恐ろしいシナリオが現実味を帯びてくる。だが、ブラジルはPK戦でなんとかチリを振り切った。
続いて行われたマラカナンの試合では、コロンビアが今の勢いをそのまま発揮して2─0でウルグアイを下した。コロンビアがワールドカップでベスト8に進出するのは初めてだという。あのコロンビアがこれだけ素晴らしいチームを手にしてようやく突破できた壁を、日本が打ち破るのは簡単なことではないのだなと再認識させられる。
マラカナンから帰りのメトロに乗る。コロンビアの人たちは、もちろん黄色いシャツ姿で歌いまくっている。コパカバーナのあたりに着く。昼は地元ブラジルのファンでいっぱいだった街が、今はコロンビア人の歓喜にあふれている。
食事をしてメトロの駅に戻ると、コロンビアのファンがまだ次々と押し寄せてくる。準々決勝で対戦することになったブラジルのサポーターとすれ違うと、彼らは軽いあいさつをしている。言葉はわからないが、中身は想像がつく。「3─0でコロンビアだ!」とコロンビア人が言い、「チッチッチ、何言ってんだよ」とブラジア人が返す。そんなたわいのないやりとりなのだろうけど、それをできることがうらやましい。
この日は黄色に染まったリオのメトロ。マラカナンで決勝が行われる日には、何色に染まるのだろう。
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