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異常なことばかり、集団的自衛権議論の周辺 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2014年7月3日 10時58分

 日中関係にも大きな影響を与える香港デモの問題に関して、日本ではあまり関心を呼んではいません。まして、外交や安全保障と結びつけて論じる傾向もあまりないようです。これは、たいへんに「異常」だと思います。アメリカは、安倍政権の保守性を「方便」として認めているだけ、日本はアメリカの「人権」を中国を敵視するこれまた「方便」として乗っているだけというのであれば、実に危険な「同盟」であると言えます。

 三点目は、今回の集団的自衛権を認めるという動きに関して、中国から批判が出るのはとりあえず理解できます。安倍首相の姿勢には、中国を仮想敵として意識していることは否定できないからです。ですが、同じように韓国からも批判が出るというのは、やはり異常であると思います。

 例えば両国の世論同士の問題として、歴史や領土をめぐる争いがあるのは事実です。ですが、日韓はアメリカを仲介する形で事実上の軍事同盟を形成しているわけであり、その一方の日本が、その同盟に軍事的に貢献できるような柔軟姿勢を取ったということが、韓国で大きく非難されるというのは、異常です。

 韓国をめぐる集団的自衛権問題というのは、例えば北朝鮮が突如として韓国に対して軍事的な侵攻を開始したとして、日本の起こすべき行動は単に在留邦人を救出するだけでなく、直接的・間接的に韓国軍の活動を支援することになるはずです。

 また、北朝鮮の政権が崩壊の最終段階に差し掛かった際に、例えば拉致被害者などを自衛隊が救出するということがあるかもしれませんが、その場合にも韓国からの拉致被害者は無視していいわけがなく、救出作戦そのものに関して韓国軍との協力で行うということもあり得ると思います。

 そうした場合を考えると、韓国に対してはこの解釈変更の意図に関して、同盟国である以上は事前に外交ルート等を通じて誠実に説明がされるべきであったと思います。韓国からは「自衛隊が朝鮮半島に入る場合には、韓国の同意が必要」だということがあらためて言われているようですが、そんなことは当たり前であり、当たり前のことをキチンと話し合って良好な関係を構築できないというのは、日韓の両国首脳、両国の外交当局の関係は大変に異常な状態にあると言わざるを得ません。

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