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なぜ中国はいま韓国に急接近し始めたのか - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2014年7月9日 17時1分

 中国がこの時期に韓国への接近を試みる背景には、北朝鮮の政権崩壊が近いという情勢認識があるとみられている。朝鮮半島は「東アジアのバルカン半島」と呼ばれ、19世紀からずっと国際紛争の焦点になってきた。金正恩政権が崩壊すると、中国は北朝鮮を支配下に収めようとするだろう。

 19世紀まで中国の属国だった朝鮮半島を、中国がふたたび傘下に入れようとするのはごく自然である。このとき、韓国を味方につけることが不可欠だ。エリートに権力も知識も集中する中韓は、日韓よりはるかに親和性が高い。経済的にも、中韓の貿易は日韓や米韓より多く、韓国の中国依存は強まっている。

 しかし韓国には、中国に対する警戒感も強い。韓国に住んでいた人によると、韓国人は日本に対しては韓国政府が騒ぐほど悪い感情はもっていないが、中国に対しては恐怖を抱いているという。日本が朝鮮を侵略したのは任那日本府と豊臣秀吉の2回しかないが、中国は王朝が代わるたびに朝鮮を侵略し、ときには中国の領土にした。中国の属国になったら、社会主義にされるかもしれない。

 それに対して米軍が介入すると、軍事衝突が起こる可能性もある。このとき韓国内の基地は北朝鮮からの攻撃に弱いので、日本国内の米軍基地が重要な役割を果たす。場合によっては、自衛隊も後方支援する必要がある。集団的自衛権の最大のねらいは、こうした朝鮮半島の有事にそなえることだ。

 いまだに「アメリカの戦争に巻き込まれるのはいやだ」といって集団的自衛権に反対する人々がいるが、これは逆である。日本が米韓と一体になって抑止力を強めないと、朝鮮半島で力のバランスが崩れたとき、中国が軍事的冒険主義に出るリスクがある。それを防ぐために、集団的自衛権が必要なのだ。

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