ウクライナ東部、旅客機撃墜を取り巻く複雑な状況 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年7月18日 11時56分
事件の数時間後にオバマ大統領はプーチン大統領と電話会談しています。会談は事前に予定されていたものだというのですが、その中で今回の事件に関する意見交換があったと報じられています。また、その直後にオバマ大統領はデラウェア州で演説したのですが、「大変な悲劇が起きた」という表現にとどめていました。
なおウクライナ政府は「これは親ロシアの『テロリスト』の犯行であり、ロシアの将校と『テロリスト』が携帯電話で航空機攻撃に関する会話をしているのを、我々は傍受している」としています。その上で「我々の攻撃の結果ではない」と主張しています。
とりあえず本稿の時点で発表されている、事実関係の概略は以上です。
では、真相はどうだったのか? 現時点の報道で出てきているのは次の2つの「説」です。
地対空ミサイルの攻撃であったとして、親ロシアの「分離主義者」が発射したのであれば、14日に撃墜したウクライナの輸送機とボーイング777を誤認した結果という可能性が指摘されています。「ブーク」システムというのは、マッハ4で飛翔するミサイルを高度2万メートルの高空のターゲットに命中させることが出来る精巧なものですが、ターゲットを捕捉するまでの索敵でミスをすれば、そのまま誤爆になってしまうわけで、「素人」同様の活動家が誤って操作したことは十分にあるという「解説」がされています。
その一方で、ウクライナ側が発射したとなれば、プーチンの乗った専用機を狙った可能性という陰謀論も出ています。仮にロイター電が示唆するように「プーチン専用機撃墜未遂」というストーリーがあるとしたら、プーチンとオバマが電話会談をしたということが即座に発表されたことは、プーチンが自分の無事を国際社会に対して宣言するのに、アメリカは協力した格好になります。
なお誰もが思った3月の事件の関連ということでは、現時点では特にこの2つの事件を結びつけるストーリーはありません。あくまで偶然にマレーシア航空が2度の悲劇に襲われたという理解がされています。
とりあえず、アメリカは事故調査の専門家チームをウクライナに派遣することにしており、ウクライナは調査団の受け入れを表明しています。また、多くの犠牲を出したオランダ、旅客機を撃墜された被害国であるマレーシアも真相究明活動を進めるようです。
一方で、NY市場は「ウクライナ危機の激化」を懸念して下げましたが、それほど深刻なニュアンスが広がっているわけではありません。いずれにしても、現地ならびに欧州、アメリカは夜になりましたが、一夜明けて現地の18日の金曜日になったところで、どのような動きが出てくるか、大変に注目されるところです。
また、この大ニュースと平行して、イスラエル軍がおそらくは予定していたと思われる、ガザ地区への地上軍の侵攻を開始しています。マレーシア機の事件と同様、こちらの方も大きく報道され、イスラエルへ向けて国際社会の批判は高まっています。
マレーシア航空機墜落に関するニュースはこの後、新しい事実が判明することで事件の様相がどんどん変化していくことが予想されます。ですが事件当日の時点で、事件がどのように伝えられ、どのような事実が発表されていたかを記録しておく意味でも、本日時点のアメリカでの報道を整理しました。
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