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現代日本で「大家族化」は可能なのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2014年7月22日 11時14分

 ということは、幼稚園の年長で「おじいちゃん、おばあちゃん」が79、小学校に上がる頃で80、中学に進む頃には86という年齢になります。つまり、年齢が離れすぎているのです。小さな子供をケアするには、祖父母の方はかなり体力が落ちてきている年齢であり、その次の段階として例えば祖父母をケアするには、子供の方は心構えとしても注意力のうえでも幼すぎます。

 もちろん祖父母が衰えたとして、そのケアは第3子ではなく長兄なり長姉が行うのであれば、年齢差は「マイナス4」の「70」になりますが、やはり85歳を越えた祖父母世代と、15歳かあるいはそれより若い孫の世代が相互にケアをしている、その間の現役世代は夫婦で共稼ぎという構図は、かなりムリがあるのではないかと思います。

 祖父母世代と孫の世代の年齢差が60前後であれば、孫が手のかかる幼い時期には、祖父母はケアをするだけの十分な体力があると思いますし、また祖父母がケアを必要とする頃には、孫世代は高校生になっていて精神的にも体力的にも「愛情の恩返し」ができる可能性が高いでしょう。ですが、年齢差が74~75以上になると、三世代同居のメリットが機能する年数は非常に短くなる危険があります。

 そうなると、結局は現役世代が、高齢な親のケアと、幼い子どものケアの双方を背負う形となり、夫婦での社会貢献や経済活動は限定されてしまうと思います。

 ということであれば、改めて親の元気なうち、つまり自分の年齢として20代のうちに2人も3人も産んでおく、そうして祖父母との年齢差が開かないようにしておいて、現役世代は三世代同居のメリットを享受して社会で活動するという方向に持っていかないといけないでしょう。



 その場合、親の方はキャリア形成ができないうちに産休や育休を何度も取ると、生涯賃金が下がるという問題もあります。また、そのような事情もあって実際の出産トレンドに関しては高年齢化が進んでおり、この流れを逆転させるのは大変に難しいと思います。

 問題はそれだけではありません。孫と祖父母世代の年齢差を縮めることができて60前後になっても、これからの社会では孫が乳幼児の段階では祖父母世代がまだ仕事を辞められない可能性が高くなります。つまり年金受給年齢が繰り下がっていくことで、まだまだ現役世代になるからです。これでは孫のケアはフルタイムではできません。

 そう考えれば、思想的に保守的だとか、福井や富山のような大きな家が必要だとかいう以前に、三世代同居の「大家族」を復活させれば、家庭内で子育てをしながら「第3子」も産めるようになるという話が成立する条件は、実はかなりハードルが高いと言いますか、ヒットするゾーンが狭い話です。

 実際は孫と祖父母の年齢差が大きすぎて両方共にケアを受ける側に回るケースがあり、また年齢差を縮めることができると、今度は三世代のうち二世代が現役として働かなくてはならなかったりするからです。やはり、政策論としては核家族をしっかりサポートして、彼らの人生設計の中に子育てとキャリアの両立が可能な制度を、難しさはあってもコツコツと作っていくしかないのだと思います。

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