グーグルの反撃で骨抜き「忘れられる権利」
ニューズウィーク日本版 / 2014年7月22日 15時37分
検索サイトの運営会社は、個人名と個人情報を含むサイトへのリンクを検索結果から削除する義務がある──社会保障費を滞納した過去をネット上から消したかったスペイン人男性らの訴えに対し、欧州司法裁判所(ECJ)が「忘れられる権利」を支持した裁定だ。
スペインの個人情報保護当局と対立していたグーグルも、この裁定に従い削除要請に応じ始めた。ニューヨーク・タイムズによれば、受け付けを始めた5月末からの1カ月で、要請は約7万件に達したという。削除対象となったページは、EU圏のグーグルの検索結果から除外される。
ただし、あくまでも検索結果から除外されるだけで、ページそのものが消えるわけではない。しかも、表示されなくなるのは特定の氏名で検索した場合に限られる。そのため、検索キーワードの選び方次第では該当ページが表示されることもある。
そこでグーグルは一計を案じた。削除要請に基づいて検索結果から除外したリンクには大手メディアの記事もあった。「報道の自由」を信奉する彼らに、グーグルは事の次第を通知したのだ。
削除を知らされた英ガーディアンやBBCでは、削除された事実をオリジナルの記事内容と共に報道。グーグルの検索結果から「消した」はずの記事が、逆に注目を集める結果になった。
ガーディアンで削除されたのは、プレミアリーグの審判だったドーギー・マクドナルドの記事。試合での判定について虚偽の説明をしたとして辞任に追い込まれたという内容だった。
BBCの場合は、07年に巨額損失を出して更迭されたメリルリンチ証券のオニール元CEOの記事が削除対象となっていた。
グーグルは削除要請した人物の素性を明らかにしていない。ただ、ガーディアンやBBCの例のように、削除対象になった記事を見ればそこに出てくる本人もしくはその関係者である可能性が高いと推測される。削除の事実を公開することで「過去を消したがっている人物」の存在が際立つというわけだ。
もっとも、グーグルも悪戦苦闘している。一度削除したページを復活させてみたりと、対応を模索し始めたばかりで殺到する削除要請をさばき切れていない。「忘れられる権利」が本来の趣旨どおりの効果をもたらすのは、まだ先になりそうだ。
[2014.7.22号掲載]
安藤智彦(本誌記者)
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