今なぜ、「オバマ罷免」なのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年7月29日 10時37分
そんな「漠然と色々なことがうまく行っていないし、アメリカの威信も低下した」雰囲気の中で、何もかもオバマ個人が悪いというスローガンの立て方しか「全国レベルでは打ち出せない」のです。
それでも、あと二年で大統領選なのだから、共和党も早々に新しいリーダー候補を出して、堂々と中間選挙を戦えばいいではないかということになりますが、それも出来ません。2016年大統領選に向けた共和党のリーダー選びは、あまり盛り上がっていないのです。
さらに、そんなにオバマが嫌いでホワイトハウスを奪還したいのなら、罷免などという無謀なことを叫ぶより、2016年に堂々と戦って大統領職を奪還すればいいではないか、と言いたいところですが、ここにはヒラリー・クリントンという「巨大な存在」がいるために、今から共和党は「ビビって」います。
共和党にとって11月の中間選挙は、「敵方ではヒラリーが前面に出てこない」というラッキーな最後のチャンスでもあります。ですが、個別の政策論に関してもっと良い代案があるわけでもない、そこで「悪いのは全部オバマ」だということにして罷免を叫んで気勢を上げている、それ以上でも以下でもないのです。
要するにこの動き自体にあまり意味はなく、実際には11月の中間選挙での民主党の敗北はもう織り込み済みで、2016年に向けて水面下では「ヒラリー対共和党新世代」の戦いがもう始まっているとも言えます。
ただし中間選挙の時点では、大統領選に向けた政局を前面に出すことはできません。ですからその代わりとして、ほとんど無意味な「オバマ罷免」のスローガンが横行しているのです。
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