中国が刺激したロシア海軍の復活
ニューズウィーク日本版 / 2014年8月5日 12時1分
結果は? フィリピン側が根負けし、今は中国がスカボロー礁を占拠している。
「腕試し」と歴史の重み
このほか中国は、日本と領有権争いを繰り広げている尖閣諸島(中国名・釣魚島)の近くにも漁船を送り込んできた。こうしたケースについて、新米国安全保障センター(ワシントン)のアジア太平洋安全保障プログラムのイーライ・ラトナー部長は、中国海軍がますます能力と洗練度を増しつつあるなか、中国政府が「腕試し」をしているのだと指摘する。
こんな中国の台頭が、実はロシア海軍の復活を助けている。中国の旺盛な資源需要のおかげで、石油・天然ガスから木材、鉄鉱石に至るまで、ロシアの輸出品である天然資源の国際価格は軒並み高騰した。これがロシアの国営企業に、そして政府に大きな利益をもたらした。この軍資金を元手に、プーチン政権は冷戦終結後20年にわたる凋落期を脱け出して軍備増強へ舵を切ったのである。
プーチンは今、20年までに軍事予算に約7000億ドルを投じると豪語している。その大部分は海軍力強化に向けられる見込みで、ロシア政府の「買い物リスト」にはアドミラル・グリゴロビチ級フリゲート艦6隻と空母6隻、ヤーセン級攻撃型原子力潜水艦8隻、そしてアメリカへの核攻撃が可能な弾道ミサイル搭載の新世代原潜も含まれている。
今も昔も、海軍は「強いロシア」のシンボルだ。北極海に面するムルマンスク州の軍港の沖合で、00年に魚雷の暴発で原子力潜水艦が沈没し、乗員118人が犠牲になったとき、自分の人気が急降下したことを、プーチンは忘れていない。
歴史を振り返れば、ロシアの偉大な支配者たちは必ず海を制してきた。
「ピョートル大帝はバルチック艦隊を欧州列強に見せつけ、ロシアはヨーロッパの大国だと宣言した」と言うのは、歴史家のアンドレイ・グリネフだ。「エカテリーナ2世は1770年にチェシメ海戦でオスマン・トルコ海軍を打ち破る一方、アラスカを植民地にしてロシアが世界の大国であることを示した」
こうした歴史はプーチンも意識しているのだろう。だからシリアのタルトスにあるロシア海軍の基地を復活させている(旧ソ連圏以外でロシア軍の施設があるのはここだけだ)。
タルトス基地は71年に建設された保守・修理施設だが、実際は全長800メートルに満たない小さな土地で、90メートルほどの浮桟橋が2つあるだけ。これではロシア軍が所有する最も小さいフリゲート艦も停泊できない。
この記事に関連するニュース
-
中ロ連合艦隊が小笠原沖に出現! 日本列島を「合同パトロール」で一周か 台湾沖での大規模軍事演習との関係は?
乗りものニュース / 2024年10月16日 6時12分
-
台湾を包囲 中国軍機、過去最大125機が演習参加 太平洋でもロシア海軍と合同演習 海上、空域封鎖なら日本にも圧力が
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月15日 11時42分
-
グアムまでひとっ飛び!?「中国空母が戦闘機の発着艦」驚きの630回! 洋上補給訓練も
乗りものニュース / 2024年10月7日 15時12分
-
中国・ロシアの一大連合艦隊 北海道沖に出現! 陣形組む様子を自衛隊が空撮 情報収集艦も一緒か
乗りものニュース / 2024年9月24日 15時12分
-
「北海道沖に核廃棄するな!」日本の税金も使ったオンボロ原潜の大量解体ようやく目途 ただウクライナ侵攻の影響で今後は?
乗りものニュース / 2024年9月24日 6時12分
ランキング
-
1ネタニヤフ氏私邸狙いドローン=ヒズボラ発射か―イスラエル
時事通信 / 2024年10月19日 20時51分
-
2「ガザはこの世の地獄」毎日子ども40人殺害 国連
AFPBB News / 2024年10月19日 17時2分
-
3初のG7国防相会合、ガザでの即時停戦要求…国連レバノン暫定軍への支援も盛り込み共同声明採択
読売新聞 / 2024年10月20日 0時29分
-
4ロシアに派遣された「北朝鮮兵」の動画、ウクライナ当局が公開「露は捨て駒として使うつもりだ」
読売新聞 / 2024年10月19日 20時48分
-
5北朝鮮派兵なら「戦闘拡大」=ウクライナで会見―仏外相
時事通信 / 2024年10月19日 22時1分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください