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『ハウス・オブ・カード』が変えるドラマの法則

ニューズウィーク日本版 / 2014年8月8日 12時8分

「ただ、具体的にどうリメークしたらいいのか私には分からなかった」と、フィンチャーは認める。「でもその辺はボーがとてもうまくやってくれた。支持者と握手したり赤ん坊にキスしたり、ショッピングモールの開店式に顔を出すといった地道な活動と、ワシントンの政治がどうつながっているかをうまく描いてくれた」

 ウィリモンは政治の世界と無縁ではない。後に民主党全国委員会委員長を務めたハワード・ディーンが米大統領選予備選に出馬したとき、選挙活動を手伝ったこともある。その経験を基に書いた戯曲は、ジョージ・クルーニー監督・主演の『スーパー・チューズデー』として映画化された。

「政治家の遊説活動に同行すると、『この人たちも人間なんだ。普通の人と同じように食事をし、トイレに行き、家族とゆっくり時間を過ごしたいと思うんだ』と気付く」と、ウィリモンは言う。「政治とは多くの意味で人間関係だ。人間の非合理的な部分を利用し、操ることだ」

 アンダーウッドと冷淡な妻クレア(ロビン・ライト)の関係もウイットとスリルに満ちている。「2人の夫婦関係と力関係はとても興味をそそられる」とマーラは語っている。



罪悪感のかけらもない主人公

 このドラマは冷酷さを、まるで信仰に次ぐ美徳のように描いているのが特徴だ。とすると、アメリカの政界では善人は成功できないということなのだろうか?

「いい質問だ」とウィリモンは言う。「ならば『善人とは何だ? そんな人間はいるのか?』と問い返したい。『莫大な富の裏には必ず大きな犯罪あり』という言葉がある。私はあらゆる高位高官の職の裏にも大きな犯罪あり、と考えている。ぞっとする人も多いだろうが、話としてはすごく魅力的だ。主人公に罪悪感のかけらもないとくれば、なおさら面白い」

 このドラマの基本的なテーマは野心、信頼、裏切り、欲望だ。「誰もが経験するものだろう。政治と呼ばなくても、私たちの日常は政治。こうした日々の要素が集まって巨大化し、そこにリスクが絡んだものが本物の政治というわけだ」

 高いリスクが絡むという点では、ネットフリックスも同じだ。シーズン1の13話を同時配信することで、どこまで見るのかの選択権を視聴者に与えた。その結果、視聴者はより賢くなり、より多くを要求するようになった。続きを見たい願望はさらに高まり、次のシーズン開始まで待つ忍耐力はなくなる一方だ。

 いずれは、従来のドラマに付き物だったあの嘆きが聞こえてくるかもしれない。「なんでこんなに待たされなきゃいけないんだ!」

[2014.2.26号掲載]
ジェース・レーコブ


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