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猫背の人は身も心も損している

ニューズウィーク日本版 / 2014年8月19日 15時14分

 薄暗かったりちょっと離れていて細かい部分が見えなかったとしても、そこにいるのが親しい人であれば立ち方や歩き方から分かるもの。姿勢によって、人は無意識のうちに自らを表現しているからだ。

 その一方で専門家は、姿勢を変えることで生活や健康状態、もしかすると運命にまで好ましい変化を引き起こすことができると言う。例えば──。

みなぎる力

 ハーバード・ビジネススクールのエイミー・カディ教授は12年、優れたアイデアを世界に広めることを目的とした講演会TEDカンファレンスで「ボディーランゲージが人を作る」という講演を行った。これによれば、1日に2分間「力あふれる姿勢」を取るだけで、その人の運命は変えられるという。

 カディによれば、胸を張った姿勢はその人の力強さを示しており、逆に肩をすぼめた姿勢は力のなさを示している。これは人間に限らず、類人猿一般に言えることだ。

 そして胸を張った姿勢は力を「生み出す」効果も持つことが複数の研究で証明されている。

 カディによれば、胸を張ると優位に立った気分が高まり、リスクや痛みを恐れなくなるほか、行動的になったり不安感が軽減される。また支配欲をつかさどるホルモン、テストステロンの数値が上がり、ストレス反応として分泌されるホルモン、コルチゾールの値は下がるという。

気分

 サンフランシスコ州立大学のエリック・ペーパー教授は、姿勢によって思考がどれほど前向き(もしくは後ろ向き)に変化し、なおかつ気分の良し悪しが変わるかについて調べた。

 スキップしたり上向きに腕を振りながら歩くよう指示されたグループと下を向いて歩くよう指示されたグループを比べた実験では、スキップ組のほとんど全員が前よりも元気で幸せで前向きな気分になったと答えた。だが下を向いていた人たちは、悲しく孤独で孤立した気分や、眠っているようなゾンビのような気分になったと答えた。



記憶
 
 ペーパーは、姿勢によって思い出す記憶の内容が変わり得ることも発見した。背中を丸めて下を向いて座っていると、無力感をひしひし感じるような暗い出来事を思い出しやすくなり、背筋を伸ばし上を向いて座っていると、元気になるような明るい記憶ばかりが頭に浮かぶ傾向があるという。

自信

 オハイオ州立大学では09年、学生71人を2つのグループに分けて異なる姿勢を取らせ、アンケートに答えさせるという実験を行った。その結果、背筋を伸ばしていた学生たちは内容のいかんを問わず自分の考えに自信を持っていたが、前かがみに座っていた学生は自分の意見に確信が持てなかった。

つまり、背筋を伸ばすことは自己評価を高める効果があるということだ。

消化

 いい姿勢は消化器を支える体の奥の筋肉を鍛えることにもつながる。専門家によれば、前かがみの姿勢は胃酸の逆流や便秘、ヘルニアなど消化器トラブルの要因となる可能性がある。

頭痛

 イタリアでは08年、公務員340人以上を2つのグループに分け、片方には正しい姿勢の利点を教えた上で、首や肩が凝らないように2〜3時間おきに姿勢を伸ばす体操をするよう促すという実験が行われた。8カ月後、体操をしたグループはそうでないグループに比べて頭痛が41%、首や肩の痛みが43%、鎮痛剤の使用が51%少なくなったという。

[2014.8. 5号掲載]
スーザン・スカッティ

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