殺害されたジャーナリストはISISへの「生け贄」だった
ニューズウィーク日本版 / 2014年8月21日 19時27分
ISIS(イラク・シリア・イスラム国、別名ISIL)は19日、アメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーの首を切断する処刑映像を公開した。だがシリアの情報筋によれば、フォーリーはISISへの忠誠の証として別の武装組織「ダウード旅団」に誘拐された可能性が高い。
ダウード旅団(現在のメンバーは約1000人)は元々自由シリア軍(FSA)など比較的穏健なシリアの反政府組織と共闘していたが、最近になってISISに急接近した。FSAから離脱し、100台余りの車両を連ねてISISの拠点であるシリア北部のラッカに移動したと、インターナショナル・ビジネス・タイムズ(IBT)が先月伝えたばかりだ。
ダウード旅団は以前はアブ・モハメド・アルシャミの指揮下で「ムジャヒディン軍」を名乗っていたが、12年末に現在の組織名に改称した。12年にシリアで行方不明になった2人の報道写真家、ジョン・カントリーとジェロエン・ウーレマンスを誘拐したのもこの組織だと見られている。カントリーらは別の反政府組織に助けられて脱出できた。
2人は脱出後、自分たちを拘束した組織にはイギリス式アクセントの英語を話すメンバーが多くいたと証言している。フォーリーの処刑映像に登場した人物もそうだ。カントリーはその後12年秋にフォーリーと一緒にシリアに戻ったらしい。
ダウード旅団は、シリア北西部のイドリブ県のジャバル・アル・ザウィヤで「スーカー・アルシャム(レバントのハヤブサ)」という武装組織と共闘を組んでいた。その後の戦闘でこの2つの組織はダマスカス、アレッポなどでも影響力を拡大。新たな指導者ハッサン・アブードの指揮下に入った。
米国務省とホワイトハウスも、さらにフォーリーと契約していたグローバル・ポストも、フォーリーを誘拐した一味について、これまで詳しい情報の発表を控えてきた。
シリアではこの2年間にアメリカ人ジャーナリストが何人も誘拐され、彼らの所在や消息を断った時の状況について、さまざまな噂が流れている。しかし被害者の親は情報の公開に慎重にならざるを得ない。下手に情報を公開すれば、イスラム過激派に拘束されているわが子を危険にさらすことになりかねないからだ。フォーリーのケースでは、彼の家族もグローバル・ポストもフォーリーの身の安全を最優先し、入手した情報をいっさい公表しなかった。
「捜査の過程では、シリア政府軍に拘束されている疑いが持たれたこともあったが、その後シリアのイスラム過激派に監禁されているという確証を得た」と、グローバル・ポストのフィリップ・バルボニCEOは19日に語った。「われわれは家族の要請と捜査当局の助言に従い、情報の公表を見合わせていた。民間の警備会社と協力して大量の情報を集めていたが、それらはいっさい外に出さなかった」
エリン・バンコ
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