米旅客機内の「リクライニング・トラブル」頻発、その原因は? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年9月4日 12時51分
アメリカ上空で、米系航空会社のフライト中に乗客同士がケンカを始め、当人たちを降機させるために着陸地変更(ダイバート)をして緊急着陸する、こんな異常な事件が1週間に3回も起きました。
まず8月24日のユナイテッド1462便。これは東海岸のニューアーク(ニューヨーク近郊)から中西部のコロラド州デンバーへ向かう、日曜午後のフライトでした。ある男性の乗客が「ニー・ディフェンダー」という「アイディア・グッズ」を使って前席のシートをリクラインできないように固定していたのですが、これに前席の女性客が激怒。男性にソーダ水をかけるという事態に発展しました。
機長はとっさに途中のシカゴに着陸して、この2人を降機させてコロラドへ向かったのです。このケースでは両人は「カスタマー・サービス上の問題が生じた」という航空会社の見解で刑事責任は問われないようですが、損害賠償の可能性はあるようです。
続いて8月27日のアメリカン62便は、マイアミからパリのCDG(シャルル・ドゴール空港)行きでした。61歳のフランス人が前席の乗客が座席をリクラインさせてきたのに激怒してケンカになったのですが、この便にはエア・マーシャル(航空保安官)が乗機しており、現行犯で捕まってボストンに緊急着陸、降機させられています。
9月1日のデルタ2370便。これは、ニューヨークの国内線専用空港のラガーディアから、フロリダ州のウェストパームビーチ行きでした。月曜の夜の便で、これもリクライニングを巡って乗客がケンカを始めたために、ジャクソンビルにダイバートしています。ウェストパームビーチとジャクソンビルでは、フライトタイムで30分ぐらいしか変わらないので最終目的地まで行けば良かったようにも思うのですが、機長としては緊急性があると判断したのでしょう。
いずれも、全く似たパターンです。最初の事件は、後ろの男性がラップトップを広げていたのを前の女性が妨害しようとしたというケース、2番目の国際線の場合はおそらくは機内食と食後の酒が絡んでいるらしいなど、多少状況は異なるようですが、本質的には同じです。
ちなみに、最初の事件で問題になった「ニー・ディフェンダー」という「グッズ」ですが、いわゆる旅行用の「ニッチ・アイディア商品」です。最近のエコノミーのシートの構造、つまり座席を傾けても後席用のテーブルは水平を保つ機構を逆手に取って、テーブルの回転軸を「ブロックして」しまうものです。そうすると、座席を傾けることができなくなるという寸法です。
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