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イタリアの景気後退はお堅いユーロのせいだ

ニューズウィーク日本版 / 2014年9月5日 12時43分

 毎年8月になると、イタリアの特権階級の人々はフィレンツェを一望できる避暑地、フィエゾレの丘に集まる。今年の夏、昔と変わらぬ美しいトスカーナ地方の景色を眺める彼らにいつもの明るさはなかった。イタリアの栄華を受け継ぐ彼らの目には、イタリア経済が急速に悪化する様子が映っていたからだ。

 今年の第2四半期(4〜6月期)、イタリアのGDP成長率は前期比0・2%減と第1四半期の同0・1%減に続くマイナス成長に。07年に始まった世界金融危機以降、イタリアは3度目の景気後退に突入した。

 イタリアのGDPは10年前より4%縮小。10年前の第2四半期は3550億ユーロだったインフレ調整後のGDPが、今年の第2四半期には3400億ユーロに減ってしまった。

 イタリア経済は世界的な金融危機から回復できず、経済規模も小さくなり続けている。金融危機に見舞われた際、イタリアはEU加盟国の義務として財政緊縮を求められた。景気刺激をすべきときに、財政を引き締めざるを得なくなったのだ。

 イタリア経済は見る間に減速し、失業率は跳ね上がった。現在の失業率は12・3%だ。

 イタリア経済の悪化にEU各国の指導者も不安を強めている。ユーロ圏第3の経済大国であるイタリアに何かあればユーロの信用に影響するからだ。

 99年にユーロが導入されて以来、イタリア経済は基本的に停滞したままで、EUに加盟した意義が疑問視されている。景気後退時にも財政赤字の上限をGDPの一定割合に抑えるというルールは、ユーロ高を招く一方で景気低迷にあえぐ国々の景気をますます悪化させた。

 ドイツのように好景気の北ヨーロッパ諸国は今のところ健全に見えるが、イタリアをはじめとする南欧勢の景気後退はユーロ圏の足を引っ張ることにならないだろうか。

 ユーロ創設の目的は、この通貨を採用した国々に恩恵をもたらすことにあったはず。だがこれまでのところ、イタリアが受けた恩恵はゼロと言っていい。

[2014.9. 2号掲載]
アナ・バーナセク

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