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フェミニズム対ナショナリズムの戦争に発展した慰安婦問題 - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2014年9月17日 18時10分

 これに対して、日本のナショナリズムも爆発した。朝日新聞が大誤報を訂正した8月には、週刊誌が朝日を「売国奴」とか「反日新聞」などと罵倒する特集を毎週のように組み、『正論』や『WiLL』などの右派論壇誌は全ページをつぶして大特集で「慰安婦も南京大虐殺もなかった」などと気勢を上げている。

 フェミニズムは思想と呼べる内容のない感情論だが、ナショナリズムも感情である。女性の人権も国家の尊厳も大事だが、感情で政治を決めてはいけない。それが感情論によって何百年も宗教戦争を続けた結果、ヨーロッパ人が学んだ貴重な教訓である。政教分離や信教の自由といった原則は、政治を宗教的感情から切り離すためにつくられたのだ。

 単なる売春婦の話をここまで大事件に仕立てた朝日新聞の責任は重いが、これは外交的には決着のついた問題である。日本政府に道義的責任はあるが、法的責任はない。前者についてはすでに河野談話で謝罪しており、後者については個人補償は韓国政府が行うことが日韓請求権協定で決まっている。

 だからまず朝日新聞が誤報をすべて撤回し、歴史的事実を詳しく検証する義務があるが、それとは別に国が事実関係を調査する必要がある。内閣は動けないので、国会が原発事故のときのような特別調査委員会をつくり、徹底的に史実を解明すべきだ。歴史を書く仕事は、新聞記者にまかせるには余りにも重要である。

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