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隈研吾が語るTOKYOの未来図

ニューズウィーク日本版 / 2014年9月30日 17時6分

 超高層ビルの建築プロジェクトが目白押しの東京。天高くそびえる摩天楼の街に住民の居場所はあるのか。新国立競技場の建て替え計画で、巨大過ぎるザハ・ハディド案について東京都などに異議を唱えた日本を代表する建築家の一人、隈研吾・東京大学教授に話を聞いた。

                  *

──もはや劇的な高度成長を望めない東京をより活気ある町にするために、何をすべきだと思うか。

 北京や上海のような「若い」町とは違う「高齢」の都市だという事実に即した都市計画が必要だ。行政と企業の議論は常に、若い都市を想定している。東京で進んでいる多くの再開発は、高層ビルとショッピングセンターなど20世紀的なモデルに基づいている。

 東京は、都市計画の新たなモデルを提示すべきだ。今後20〜30年間でアジアのどの都市も高齢化の道をたどるだろうが、東京はその先頭を走っている。

──具体的には何をすべき?

 すでにある(古い街並みや歴史的建造物などの)遺産をできるかぎり活用することが、1つの方法だ。よりサステイナブル(持続可能)な都市に近づけるし、都市の歴史と文化を継承することもできる。

 成熟した都市にとっては非常に大切なことだ。遺産を破壊してしまえば、ゼロから始めなければならない。そうする以外に選択肢がない場合もあるが、都市を破壊する行為はできるかぎり避けるべきだ。

──遺産が守られた例はある?

 下北沢の再開発は興味深い。また、私が暮らす神楽坂は関東大震災や(第二次)大戦による被害を受けておらず、都内で最も古い街並みが保存されているエリアの1つだ。多くの小さな家や店が残っている。
 
 現在、(神楽坂駅前にある)新潮社の書籍倉庫の改築プロジェクトに取り組んでいる。この倉庫は25年間使われていなかった。彼らにとってはただの古くて汚いビルで、使い道がわからなかった。典型的な日本的メンタリティーだ。

 倉庫を見学し、リノベーションは可能かと問われたとき、私は「この建物が好きだ!」と感じて設計を引き受けた。10月(10日)にオープンする予定だ。東京にはこの手のリノベーションが必要だと思う。



──東京では、あなたが指摘するような遺産を守りながら小規模な変更を加える開発と、高層ビルを中心とした大型再開発の2つがせめぎ合っているようにみえる。

 私の夢はその2つのモデルを融合することだ。経済的な条件から高層ビルが必要なケースもあるが、ビルの足元に人間的なサイズの町を開発することは可能だ。開発業者はシンガポールや香港の真似をしようとするが、東京の条件に合っていない。

 日本企業は再開発の基本計画を策定する際、高層ビルの足元についての詳細なプランまでは描かないことが多い。だが、観光客は高層ビルに引き寄せられるのではなく、路上で感じられる人々の生活や歴史に触れたいと思っている。

 地域の活性化に取り組んでいるのはNPOばかりだ。NPOの活動は非常に重要だが、限界がある。

*本誌最新号(10月7日号)の特集「進化し続ける都市TOKYO」も併せてどうぞ。

デービッド・マクニール(ジャーナリスト)

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