香港デモ「自分が中国人だとは思わない」
ニューズウィーク日本版 / 2014年10月1日 17時44分
香港の次期行政長官選挙への中国の「介入」に反発する抗議デモは、香港島の中心にあるビジネス街を次々に占拠して香港全域を飲み込む勢いだ。
今では香港社会のさまざまな年齢層の人たちが参加しているが、当初、デモは若者主導で始まった。これはイギリス統治時代を覚えていない香港の若い世代が、ますます中国への不信感を抱いていることを示している。
中心部の商業地コーズウェイベイでデモに参加していた31歳のアシュリー・オ―は、電話取材に対して「香港は香港、中国は中国だ。我々住民が、もっと香港の行政に発言権を持つべきだ」と、語った。
今回の抗議デモは、17年に実施される香港行政長官選挙に関して、親中派が多数を占める「指名委員会」の過半数の推薦を受けた人物だけに立候補者を制限するという、中国の全国人民代表大会(全人代)の決定に反発して起きた。
しかしその背景は根深い。97年に香港が返還された当初、中国共産党は「一国二制度」を掲げ、香港の政治、経済、法制度には50年間、手を付けないと約束した。実際にはその後の17年間、たびたび香港の住民は中国政府の介入に反発してきた。
最近では12年、香港の教科書に共産党寄りの歴史を記載する「愛国教育」に反発する学生運動が拡大し、香港政府が政策を撤回している。
「愛国教育」反対運動の成功は、学生運動グループ「スカラリズム」の活動の大きな原動力となっている。グループのリーダー、17歳のジョシュア・ウォンは、今回の抗議運動で中心的な役割を果たしている。
中国側の決定に反発していた民主派団体「オキュパイ・セントラル(中環占拠)」は、当初金融街・中環の占拠を中国の建国記念日にあたる10月1日の国慶節に実施する計画だった。しかし先週、「スカラリズム(Scholarism)」をはじめとする学生グループが抗議デモを始めたため、「オキュパイ・セントラル」もそのままデモに参加した。
「参加しているのは普通の学生で、活動家ではない」と香港大学の元研究者のトレイ・メネフィーは言う。「この年代は(中国への)抵抗感を共有している」
先月、香港大学が発表した意識調査によると、18〜29歳の回答者のうち75%が中国政府への不信感を持ち、85%が「一国二制度」を信用していないと答えた。同様の不信感は50歳以上の回答者では、それぞれ41%と42%と低かった。
抗議デモでは、中国の国旗が上下逆さまに掲げられている。地政学的にも経済的にも世界情勢を揺さぶるほどの大国に、飲み込まれまいとする若者たちの無言の抵抗だ。
「今の学生は標準中国語の学習を求められた最初の世代で、本土の文化や政治に強い抵抗感を持っている」と、メネフィーは言う。「年配の世代よりよく分かっているだけに、反発が強い」
さらにデモに参加する若者にとっては、アイデンティティーの問題も重要だという。31歳のオーはこう語った。「自分たちが中国の一部とは思っていない。自分が中国人だとは思わない」
マット・スキヤベンザ
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