人間のバグを直して死を治療する「生命延長」技術 - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal
ニューズウィーク日本版 / 2014年10月29日 18時19分
聞くところによると、自分が死亡した後に身体(あるいは頭部)を保存しておき、未来のしかるべき時期がやってきたら再生してもらうというサービスに、多額の料金を払って加入している人々もいるらしい。テクノロジー業界のビリオネアの間では高額な宇宙旅行も人気だが、生命を操作する特権も金持ちのものかと、市井の人間には見えてしまう。
そうではなくとも、なぜ彼らはこれほどに生命延長にこだわるのか。
ひとつは、負けず嫌い。死ぬことは負けだから、いつまでも生きて勝ち続けるという意識はきっとあるはずだ。もうひとつは、もちろん技術への信頼感や科学的思考方法が影響を与えている。彼らは、身体のソフトウェアのバグを見つければ、死が治療できると考えているのだ。
意地悪な目で見れば、大成功を収めた人間にありがちな自己肥大もあるかもしれない。数100年前には考えもつかなかったコンピューターやインターネットを実現させた今、彼らの目には不可能なものなど何もないのだ。生命という限界すら問題ではない。
本当に生命延長が実現すれば、社会も宗教も含め、あらゆることが激変するだろう。われわれも、病気や老化を防ぐ技術の恩恵を受けられるのならば悪いことではない。けれども、デバイスの世界では、アップル、グーグル、マイクロソフト等開発者によってオペレーティング・システム(OS)が分かれてしまい、相互互換性が制限されてしまった。未来の身体は何らかのテクノロジーを内包することになるだろうけれども、人間に搭載するソフトウエアでは、そんな分化は起こって欲しくないところだ。
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