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中国富裕層が群がるアメリカの高級物件

ニューズウィーク日本版 / 2014年11月10日 12時30分



 中国人はかなり高級志向のようで、中国人向けの住宅価格の中央値は52万3148ドル(カナダ人向けの住宅価格は平均21万2500ドル)。彼らは、中国人向けの物件(風水に基づいて設計されているなど)を専門に扱う業者を利用する。例えば不動産検索サイトのジロウ・ドットコムは北京の不動産検索サイトと提携し、中国人バイヤーに情報提供している。真のグローバル不動産市場の誕生だと、ニューヨーカー誌のジェームズ・スロウィッキーは5月のコラムで書いた。

 こうした状況は、80年代後半のジャパンマネーによる米有名不動産の買いあさりを思い起こさせるかもしれない。ニューヨークのロックフェラーセンターやカリフォルニアの名門ゴルフ場が相次いで買収され、「日本株式会社」がアメリカを席巻するのではないかと懸念する声も上がった。ところがその後、日本の資産バブルが崩壊、以来20年間、日本経済は低迷したままだ。今回も騒ぎ過ぎだと主張する専門家もいる。

汚職取り締まりの影響も

 11年にニューヨークのパークアベニュープラザの株式の49%を中国の不動産グループ、SOHO中国が取得したケースなどはあくまでも例外だ。「中国マネーが象徴する資本流出はジャパンマネーのときとはタイプが異なる。企業ではなく一族や個人が原動力になっている」と、チョバネクは言う。

 きれいな空気と優れた教育システムを求めて、中国の富裕層(資産総額160万ドル以上)の64%が既に国外に移住しているか、移住を計画している。習近平(シ―・チーピン)国家主席が昨年の就任以降、汚職取り締まりに意欲的で、高級住宅を複数所有するなど富を誇示する官僚を罰していることも、海外資産購入に拍車を掛けている。

「反汚職キャンペーンのせいで資産状況を曖昧にしたがっている中国人が多い」と、チョバネクは言う。



 かつて「世界の工場」だった中国には外国からの投資が流れ込み、世界第2の経済大国に成長する追い風となった。しかし資本規制が緩和された結果、12年には資本収支が赤字に。中国政府は一層の規制緩和をほのめかしており、資本逃避を招く恐れがあるとIMF(国際通貨基金)は警告している。

 そうなれば海外の中国マネー(大半が不動産に投資されている)が、住宅費高騰が議論を呼んでいるニューヨークのような市場に及ぼす影響ははるかに大きくなるはずだと、チョバネクは言う。ニューヨークの不動産に中国マネーが殺到すれば、既に不動産を所有している人には朗報だろうが、これから買いたい人は不利になる。「こうした資本流出の受け皿になるのはどんな資産かといえば、主に不動産だ」

 GDPの伸びはどうあれ、中国人の海外投資熱は今も健在だ。「中国がいまホットだとか、アメリカが中国に完敗するとか、中国が世界第1位の経済大国になるとか言われているが、非常に多くの中国人が資金を国外に出したがっていることは覚えておくといい」

[2014.10.28号掲載]
マット・スキヤベンザ


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