映画『TATSUMI』の「昭和」で刺激的な世界へ
ニューズウィーク日本版 / 2014年11月11日 16時4分
──スタッフには日本人も?
私のほとんどの作品を手掛けている音響デザイナーが、シンガポール在住の日本人。彼は大阪弁が分かるので、今回の作品にとってはすごく重要だった。
アニメーターを取りまとめたのはカナダ人で、彼はインドネシアに工房を持っている。そこでアニメーター25人をそろえてもらって製作した。インドネシアは人口が多いので才能ある人を集めることができて、最後には辰巳作品の「贋作」を描けるくらいになった(笑)。
──別所哲也が1人で6役の声を担当するというのも変わった構成だ。
彼はすごく才能があって、舞台にテレビに映画にとすごく活躍している。そんな人にわざわざシンガポールに来てもらって1役しか担当させないなんて、そんなもったいないことはない。ということで6役を持ち掛けてみたところ、「やってみましょう」と言ってくれた。
僕はウルトラマンが大好きなんだけど、彼のことは「ウルトラマンを演じた人」として知っていた。だから収録の時にはウルトラマンのアクションフィギュアを持っていって、サインしてもらったよ!
──2011年の製作で外国では既に公開されているし、映画祭で賞も取っている。日本公開がなかなか決まらなかったのは不本意だった?
先生に捧げるために作った映画なので、それが故郷である日本で紹介されないことにはちょっと失望していた。でもついに公開が実現して、とてもハッピーだ。
──日本でも劇画を読む人がまた出てくるかもしれない。
そうしたら素敵だね! 劇画は60年代にブームになったが、70年代後半〜80年代くらいにポルノチックだったり暴力的だったりというものが出てきて......。例えば、実際に起きた犯罪が劇画に影響を受けている、なんて新聞に書かれたりもした。そんなことから、劇画が敬遠されてしまったりしたようだ。それは先生の意図する劇画とは違う方向だった。60年代には、オルタナティブミュージックみたいにちょっとヒップというか、かっこいいものだった。
──あなたが「映画にしたい」と言った時の辰巳さんの反応は?
「気がおかしいんじゃないか」「私の短編をつなげた映画なんか撮ったら、劇場で見た人は窓から飛び降りたいと思っちゃうよ」と言ってた。もちろんブラックなユーモアですけどね。でも、「暗い」ということは本人も十分承知していた。
──辰巳さんは出来上がった作品を見て、何と言っていた?
おののいていた。彼の声がナレーションで使われちゃったから(笑)。
すごくシャイで謙虚で、自分の声に自信がないようだったから、「先生に話していただいた内容を、プロの声優に話してもらいますよ」と言っておいた。でも、そんな人は探さなかった(笑)。
映画自体は楽しんでくれたようだ。自分の作った登場人物に息が吹き込まれた、と。先生はもともと映画監督になりたかった人なんです。だからこの作品が素晴らしいのは、「先生がついに映画を作った」というところだと思う。
大橋希(本誌記者)
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