米ロの軍事「スター・ウォーズ」第2章
ニューズウィーク日本版 / 2014年12月15日 12時19分
ICBMはほとんどが地上に配備されているが、支援・誘導システムは宇宙にある。その宇宙で、ある国が別の国にミサイルを誤射したら、初期対応防衛システムが作動し、意図せぬ全面核戦争が勃発するかもしれないと、軍縮問題の専門家は考えている。
こうした不安からか、またはアメリカに後れを取ることを恐れてか、ロシアは宇宙の軍縮条約につながる国際的合意に向けて努力を倍加させている。
選挙で躍進した米共和党が新たな壁に
しかし国際社会では、さまざまな国の思惑が影響し合う。国連総会第1委員会での軍縮をめぐる投票結果は地政学の現実と、ロシアとアメリカの相互不信を浮き彫りにした。
ロシアと中国が提案した国連決議案は賛成126カ国で可決されたが、ほとんどの欧州諸国とアジア・オセアニア地域のアメリカの同盟国など46カ国が棄権した。重要なのは、アメリカとその同盟国イスラエル、ロシアの拡張主義を恐れるグルジアとウクライナの4カ国が反対票を投じたことだろう。
アメリカは「公正かつ効果的に検証でき、すべての国の安全保障を強化するような宇宙軍縮の提案や構想なら喜んで検討する」と、米代表のクリストファー・バックは述べた。だが今回の中国とロシアの提案は「そうした基準を満たしていない」。
一方、11月の米中間選挙では共和党が上院の過半数を確保。国際条約を批准するのは上院と憲法で決まっているため、たとえバラク・オバマ大統領が望んでも、アメリカが宇宙軍縮問題について拘束力のある条約を締結するのは難しいだろう。防衛に関しては多くの共和党議員が、世界におけるアメリカの軍事的リーダーシップを抑え込むような国際条約を警戒する。
となると、現実はSF映画のようになっていくのか? 皮肉なことに、武器条約が軍拡競争を止めることはめったにない。
『スター・ウォーズ』最新作では、これまで以上に非現実的な兵器で武装した豪華宇宙船が登場するだろう。そして現実の世界では、そうした特殊効果を本物に変える破滅的な作業がひそかに進んでいる。
[2014.12. 9号掲載]
ベニー・アブニ
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