与党圧勝を、アメリカはどう見ているのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2014年12月16日 12時44分
解散の際には「その意味」を東京発で必死に説明していたアメリカの各新聞でしたが、選挙期間中の報道は極めて低調でした。ですが選挙結果が出ると、さすがに日本という主要国の総選挙だけあって、各紙が少なくとも国際欄のトップか2番目くらいには取り上げています。
その論調ですが、まずニューヨーク・タイムズは「熱狂なき地滑り的勝利」というタイトルで、低投票率下の与党勝利を分析した内容でした。基本的には景気の減速を受けて消費税の税率アップを先送る中で、今後の日本の経済運営に関して懸念を示した辛口のものですが、解散という判断や選挙結果に関しては尊重するという冷静な記事でした。
一方のウォール・ストリート・ジャーナルでは、選挙の洗礼を受けた安倍政権が、デフレ脱却と景気浮揚を狙って「賃上げを経済界に要請している」ということを大きく取り上げていました。
アメリカのメディアは安倍政権の例えば歴史認識などへの姿勢については、第1次の時も、第2次の現在もかなり厳しい論調が多かったのは事実です。では経済政策はどうかというと、この2つの記事に関してもそうなのですが、いわゆる「アベノミクス」に関しても、今回の「税率アップ先送り」にしても、理解を示した論調が多くなっています。
まずアベノミクスに関しては、流動性供給でデフレ傾向を克服するとか、公共投資で景気を刺激するという手法は、オバマ政権が「リーマンショック後の不況」から脱するために活用してきた政策そのものだという認識があります。
ですから、アプローチとしては民主党的であり、現在のオバマ政権に近い人々、あるいは今回の不況脱出に関する政策を支持している人々には、「アベノミクス」というのは極めて親近感があるのです。もっと言えば、極めてリベラル的な経済政策だとして、賛成しつつ、上手くいくように見守るというスタンスです。
一方の「税率アップの先送り」に関しては、5~6月ごろまでは警戒する論調が見られました。つまり、増税余力のある日本が、財政規律を確保するための増税を行うのは国際公約であり、先送りをするようなら世界の市場から不信任を受けるというような論調です。
ですが、4~6月期、そして7~9月期のGDP数値がマイナスに大きく振れると、論調は変わっていきました。アメリカの多くのメディアやアナリストのレポートでは、日本は再びリセッション(不況)に突入したという認識のもとで、2015年10月の2%アップには日本経済は耐えられないかもしれないという形で、「先送り論」に理解を示す声が大きくなってきています。
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